今回、このアルバムからの先行配信シングルとして発表された「Favorite Phrase」は、辛島美登里のたっての希望で槇原敬之に楽曲依頼し、“槇原敬之 with 辛島美登里” という形でクレジットされている。槇原敬之は1990年デビューなので、辛島とはほぼ同期デビューのアーティスト。「サイレント・イヴ」が大ヒットした時期に槇原は「どんなときも」でブレイクしており、競争率の高かった90年代のJ-POPシーンの中で、上質なポップスを世に送りだしてきた2人にはどこか共通点があるように思う。とはいえ、意外なコラボレーションに驚いたファンも多かったのではないだろうか。槇原敬之が長い間温めてきた大切な曲を提供する形になったそうだが、新しい季節を迎えるこの時期にぴったりの、どこか前向きな気持ちになれる爽やかなポップスになっている。
そして、今回の『Coral』にはもう1つ目玉がある。それはこれまでに多くの楽曲提供をしてきた永井真理子とのコラボレーションだ。先ほど紹介したセカンドシングル「瞳・元気」をはじめ、永井真理子には多くの楽曲を提供しているが、1989年に発売された4枚目のアルバム『Miracle Girl』に提供した名バラード「Keep On "Keeping On"」が今回デュエットバージョンとしてレコーディングされている。この楽曲は、永井ファンからも、辛島ファンからも長きに渡り愛されてきた名曲で、辛島自身もアルバム『BEAUTIFUL』の中でセルフカバーしている。
すでにコンサートでは披露されている「3months 〜止まった地球(ほし)~」や「エスポワール」の他、ボーナストラックとして「最後の手紙(Studio Live Version)」が収録されているのが嬉しい。この曲は、メジャーデビュー曲「時間旅行」のカップリングに収録されていた1曲だが、デビュー当時からずっと応援してきたファンに向けてのサービスも忘れないのはさすがだ。