5月2日

チェッカーズが魅せたロックンロール・スピリット!真の意味での1st アルバム「GO」

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オリジナル路線へ舵を切ったシングル「NANA」


1986年10月15日、ザ・チェッカーズ(以下チェッカーズ)は、メンバーがソングライティングを担う初のオリジナル路線シングル「NANA」をリリース。この話題で音楽シーンは大きく揺れた。しかし、ファンにとってはさほど大した問題ではなかったように記憶している。それは、これまでのアルバムでもメンバーの音楽的趣向は遺憾なく発揮されていたし、オリジナリティに長けた楽曲こそがチェッカーズの本質だということを熟知していたからだ。

作曲は藤井尚之。ブリティッシュビートに傾倒し、今まで以上に黒っぽいうねりを持つ「NANA」で見せるバンドのグルーヴはこれまでヒットチャートを席巻していた売野×芹沢コンビの楽曲とは明らかに一線を画していたし、NHKで放送禁止になるような藤井郁弥(現:藤井フミヤ)のリリックもまた、攻めの姿勢が感じられ最高だった。痛快だった。



ビジュアル的に原点回帰した「GO」、ゲストミュージシャンは森山達也


「NANA」のリリースから7ヶ月後、完全オリジナル路線の初アルバム『GO』がリリースされる。レコードの帯には「待望のセルフ・プロデュースアルバム全10曲!!」と記載されていた。ジャケットに写る7人に笑顔はなく、真っ直ぐな視線が印象的だ。ほとんどのメンバーは革ジャンを羽織る。これはもう、彼らがアマチュア時代大きなモチベーションとしていたクールスのデビューアルバム「黒のロックン・ロール」を思い出さずにいられない。そんなビジュアル的に原点回帰した『GO』にはゲストミュージシャンとして藤井郁弥・尚之兄弟と親交の深いTHE MODSの森山達也が迎え入れられる。

オープニングナンバーとして収録されている「REVOLUTION2007」のイントロで森山のブルースハープが炸裂する。クールスオマージュのジャケットアートワーク、そして敬愛する森山達也の参加。そんな自身の根源にあるロックンロールスピリットをアルバムに注入したチェッカーズだったが、サウンド的な趣向や、リリックの世界観をマキシマムにそちらへ振り切ったかといえばそうではなかった。これまでのアルバムで培われた多様性や、ファンを巻き込んでドリーミーな世界へといざなうようなリリックは昇華され、アルバムアーティストとして揺るぎない存在感を確立させた。

つまり、チェッカーズは原点に戻りながら、一歩前へ進んだ。ロックンロール・スピリットを大きなモチベーションとしてオリジナリティをより深化させたということになる。

アメリカン50’Sへの憧憬からキャリアをスタートさせたチェッカーズがブリティッシュに傾倒


全編を通して聴いてみると、「NANA」同様ブリティッシュビートが根底にあることはわかる。2曲目の「YOU'RE A REPLICANT(CAMA CAMA MOO MOO)」は、たたみかけるようなビートと作曲者・鶴久政治独特のメロディが、アルバムアーティストとして確固たる礎であることを証明したかのような極上なロックンロール。そして鶴久がリードボーカルを取る3曲目「MELLOW TONIGHT」は当時台頭していたブルーアイドソウルシンガー、ポール・ヤングを彷彿させる。ここから4曲目の「NANA」への流れは完璧だった。アメリカン50’Sへの憧憬からキャリアをスタートさせたチェッカーズがブリティッシュに傾倒していくというのは時代の流れや、彼らの進化性を俯瞰すると当然のことだと思える。そして『GO』が礎となり、後にチェッカーズはUKソウル、アシッドジャズなどロンドンの最先端を吸収しながらオリジナリティを深めていくことになる。

最大の魅力は振り幅の大きいオリジナリティ


後半に収録された曲を追って聴いていくと、その多様性に目を見張るものがある。B面の1曲目、武内享が楽曲を手がけた「TOKYO CONNECTION」は、70年代のディスコティックイメージ。徳永善也が叩き出す複雑なビートが土台となり、ダンサブルな世界観を醸し出す。続くシングルヒットを記録した「I Love you, SAYONARA」はこれまでの売野×芹沢路線を見事自分たちのものとして昇華させた大土井裕二の普遍的なメロディが魅力だ。そして、ドゥーワップグループとしての側面からは集大成的な楽曲とも言える「MY GRADUATION」も見逃せない。つまりアルバムの基盤をきっちりさせながらも振り幅の大きいオリジナリティこそが『GO』の最大の魅力だということがわかる。



高杢禎彦がリードボーカルを取る「GO INTO THE WHOLE」はロカビリーテイストが溢れ、ジャケットアートワークを一番体現している楽曲だと言えるだろう。そして、ラストナンバー「QUATRE SAISONS」では、繊細なメロディと藤井郁弥のボーカリストとしての圧倒的な表現力が相まって心地よい余韻を残しアルバムは幕を閉じる。

自身のルーツとも言えるロックンロール・スピリットを内包させながらも、多様性を拒まなかった『GO』は、独自路線への礎を堅固のものとした。アイドル的なパブリックイメージから見事に脱却しながら、アルバムアーティストとしての本質を見事に開花させる。つまり本作こそが真の意味でのチェッカーズのファーストアルバムだと言えるのではないだろうか。

註:CDでは「NANA」のB面曲「Mr.BOYをさがして」が11曲目として収録されている

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2023.09.18
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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