8月3日
片腕を失ったドラマーと共に… デフ・レパードが挑んだ逞しき作品
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photo:defleppard.com  

HM/HR 黄金期が成熟度を増していった80年代後半、来たる21世紀を見据えるかのように、近未来の HM/HR 像を模索する作品が幾つも発表された。そこには演奏を支える様々な機材の進化も背景にあるだろう。

口火を切ったのが86年のジューダス・プリースト『ターボ』だ。大胆にシンセギターを導入した音像には、これがメタルゴッドの未来形なのかと誰もが驚かされた。

クイーンズライク『炎の伝説(Rage For Order)』は、全編に渡り近未来を強くイメージさせる密度の高い作品となった。

さらにラウドネスでさえ、シンセギター等を導入した異色作「リスキー・ウーマン」を同時期に発表している。そんな時代において、最も先鋭的でモダンなアプローチのサウンドを提示してくれたのが、87年のデフ・レパードの名作『ヒステリア』だった。

彼らはここ日本ではヘヴィメタル四天王の一角としてデビューしながらも、次作『ハイ&ドライ』、続く『炎のターゲット(Pyromania)』ですら当初は評価されなかった。その後、全米での爆発的ヒットを受け『ベストヒットUSA』で「フォトグラフ」の PV がオンエアされた辺りからようやく注目を集め始めていた… そんな矢先の84年、彼らに悲劇が襲いかかる。

ドラマーのリック・アレンが交通事故でドラマーの命である左腕を失ってしまうのだ。普通ならドラマー生命を絶たれメンバーチェンジ、または解散を余儀なくされるところだろうが彼らの選択は違った。

リック抜きのデフ・レパードは考えられないとの結論に達した彼らに、イギリスの電子打楽器メーカーのシモンズ社が手を差し伸べ、片腕で叩ける電子ドラムセットの開発に動いたのだ。彼らはそれを受け入れ、最新テクノロジーの可能性にバンドの将来を預けることになった。そして、両足のペダル操作を駆使することでこれまでのフレーズまで表現できるオリジナルのドラムセットが遂に完成する。

勿論、テクノロジーの進化やサポートがあろうとも、このセットを叩きこなすには並大抵の努力ではなかったであろう。

困難な時を5人はメンバーの絆で乗り越え、生まれ変わった彼らが挑んだ作品が『ヒステリア』だった。リックがノーマルなドラムを使用できないことで、音楽的にさまざまな制約が生まれるのは当然である。しかし、彼らはその制約を逆手にとるかのように、シモンズのデジタルで斬新な響きに合わせ、機械的なシーケンサーの導入からギターやヴォーカルの処理に至るまで、大胆なサウンドメイキングを採り入れたのだ。

僕が当時発売直後に買ったのは「アナログ」輸入盤。だけど、部屋のオーディオから流れた「デジタル」ライクなサウンドはまさに未知なる体験の連続だった。意表を突くスローチューン「ウィメン」から堂々と始まる何もかも真新しいクリアな音像。プロデューサーのロバート・ジョン “マット” ランジと共に彼らが創り上げた完璧すぎるサウンドに「これが近未来の HM/HR なのか!」という驚きと興奮が収まらなかった。

そんな近未来へと繋がるイメージが膨らむ「ロケット」、これぞデフ・レパードという必殺のポップチューン「アニマル」と続き、B面最後の「ラヴ・アンド・アフェクション」まで、極上のポップセンスに彩られたハードロックが捨て曲なしで次々に流れていく。悲劇をポジティヴに転化して生み出した最先端の HM/HR に包まれて僕は強く満たされていた。果敢な挑戦を経て結果的に『ヒステリア』は彼らの代表作となり、累計約1200万枚というメガヒットを記録したことも当然といえよう。

僕が観たアルバム発売後、88年の来日公演では、その近未来的な世界観を再現しつつ、これまでと変わらぬデフ・レパードらしいエネルギッシュなステージが展開された。注目のリックのプレイも新旧の楽曲ともに違和感なく、彼らの進むべき道の判断の正しさと苦難を乗り越えたバンドの逞しさを感じるのに充分だった。

あれから約30年、『ヒステリア』は今聴いても全く古さを感じさせないどころか、時代を超越して未だに斬新な印象を与えてくれるのは驚くべきことだ。どこまでも追いつけない宇宙の彼方のように、時が流れた今でも HM/HR の最先端を拡げていく革新的な作品だったのだと改めて実感するのである。

そんなデフ・レパードが『ヒステリア』の全曲再現ライヴを10月に日本で行う。80年代の輝きと近未来が交錯する素晴らしい夜になるに違いない。

2018.07.08
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  YouTube / bosox0524


  YouTube / choppothegreat1
 

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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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