5月10日

40周年!デュラン・デュラン「リオ」2022年に俯瞰でアルバムを聴き直してみると?

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リリース40周年、デュラン・デュラン「リオ」


1982年5月10日、デュラン・デュランはセカンドアルバム『リオ』をリリースしている。

本作は、一年前のデビューアルバム『デュラン・デュラン』から格段に飛躍した若いバンドの成長過程が鮮明に刻み込まれており、その後、数々のビックヒットを連発するバンドの基礎を作り上げた作品である。

そんなエポックメイキングなアルバム『リオ』がリリース40周年を迎えることになった。

40thアニバーサリーを契機に彼らの音楽的成長を現在のポップミュージックシーンと照らし合わせて語ってみよう!

セカンドアルバムで証明した成長


デビューアルバム『デュラン・デュラン』は、「プラネット・アース」や「グラビアの美少女」といったシングルヒットに引っ張られるかたちで、英米を中心に大ヒットした。

しかし、レコードから聴こえてくる演奏はどこかギクシャクしていて、素人臭いものだし、ボーカルもあまり個性を感じることができない。ポップなメロディーを持った曲は、とりあえずビートを速めて勢いで乗り切っているものが目立つ。

しかし、セカンドアルバム『リオ』は、演奏に余裕を感じるのだ。テンポを落として演奏しても、スピード感が感じられる。

速い演奏ではなくても、サウンドからスピード感を感じさせることはロックバンドにとってかなり重要なことで、こうしたスキルを20代前半の時点で獲得したことは、とても大きな成長であり、彼らが単なるアイドルバンドではないということを証明しているのだ。

また、リリース当時の本作には9曲が収録されており、その曲の長さにも注目したい。

そもそも、デュラン・デュランの一般的なイメージは、前述の通りアルバムで聴かせるタイプではなくヒット曲連発のバンドというものだろう。しかし、本作の収録曲、実は結構長い曲が多いのだ。

全9曲のうち、3分台が3曲、4分台が2曲、5分を越える曲が4曲となっているのだが、アルバムを通して聴いても、1曲1曲が長いと感じることはなく、デュラン・デュランが工夫と努力によって楽曲を飽きずに聴かせるための構成を練り上げたことが伝わってくる。

また、ソングライティングについても、粒揃いの曲を並べることに成功しており、こちらもアルバムとしての構成力と整合感を増すことにつながっている。

「セイブ・ア・プレイヤー」で感じたモダンポップの系譜


80年代当時、そのルックスのカッコ良さやチャラチャラしたイメージ、ビデオクリップから受ける印象で完全にアイドルバンドとして認知されていた彼らだが、2022年の現在、80年代の先入観にとらわれることなく、俯瞰で本作を聴き直してみると、その演奏やアレンジからはピコピコしたシンセの音像よりも、ロキシー・ミュージックやデビッド・ボウイから続くモダンポップの系譜を強く感じる。

こうした影響を色濃く反映させた楽曲が「セイブ・ア・プレイヤー」だろう。

ダンサブルなサウンドが最大の特徴であり魅力だったデュラン・デュランが幻想的かつ深淵な音世界を作り上げ、そして、シングルとしてもヒットさせた新機軸の楽曲だ。

歌われる内容は、グルーピーとのワンナイト・ラブの享楽と虚無を歌ったものと推測できるが、彼らの歌詞は観念的に歌われるものが多いので、真相は定かではない。

本曲は、彼らのライブにおいてもアンコールやラストナンバーとして演奏される頻度が高く、メンバーにとってもファンにとっても特別な思い入れある一曲であることは間違いないと言えるだろう。

このようにダンサブルなだけではない、深淵な音世界の表現も獲得したデュラン・デュランは群雄割拠のニューロマンティクスから一歩抜け出した音楽性を獲得し、所謂、デュラン・デュランらしいサウンドを獲得したのだ。

今こそ真摯に向き合いたい、デュラン・デュランの音楽


こうした特徴は、この後もサウンドコンセプトの微調整を加えながらも大筋では変わらない彼らのオリジナリティーとして現在まで貫かれている。

昨年(2021年)リリースされた本稿執筆時点での最新作『フューチャー・パスト』においてもこうした特徴は保たれており、何度目かの80sリバイバルとも相まって、現役感バリバリの音像を聴かせてくれる。オールドファンのみならず、今時のポップリスナーをも虜にしていることは特筆すべき事実だろう。

さて、本作『リオ』がリリースされた1982年、我々ロックファンも当時の音楽ジャーナリズムもデュラン・デュランを真剣に音楽巧者として捉えず、“アイドルバンド” という側面ばかりにスポットを当てていたことは、今となっては大きな誤解と過ちだったと言わざるを得ない。

音楽的な強度を上げても、真剣に取り合ってくれないフラストレーションから彼らはパワー・ステーションやアーケイディアというサイドプロジェクトを発足させてデュラン・デュランというブランドから距離を置き、作品を発表したことは至極当然な成り行きだったのではないだろうか?

80年代というキラキラした時代の空気感がアイドルバンドとしての側面ばかりに注目を集めさせてしまったのであれば、音楽家としてのデュラン・デュランは時代の被害者にほかならないだろう。

我々が80年代に気付くことができず、犯してしまった罪を今後、他のアーティストに対して繰り返さないためにも、本作『リオ』の40thアニバーサリーを契機にその音楽性の本質に今一度、真摯に向き合ってみてはどうだろうか?

世代を超えて引き継がれたデュラン・デュランの遺伝子


1982年の傑作アルバム『リオ』を音楽的に再評価するには80sリバイバル真っ只中の現在は最適なタイミングと言えるだろう。

特に現在、隆盛を極めているハイパーポップと言われるアーティストたちから聴こえてくるキラキラした音像とポップなメロディー、アーティストによってはジェンダーレスなルックスやイメージを見聞きするにつけ、デュラン・デュランからの影響の大きさを感じることができるだろう。

世代的なところから分析してみると、先日、UKチャートでアルバム1位を獲得したハイパーポップの代表的なアーティスト=チャーリーXCXは現在29歳。同シーンにおける他のアーティストも20代から30代前半であることを考えると、彼らの親世代が青春時代に聴いていたのが、デュラン・デュランの本作『リオ』以降の大ヒット連発期間だったりするわけだ。

そうした時代背景を鑑みると、デュラン・デュランの遺伝子は間違いなく世代を超えて引き継がれていることに気付かされる。

こうしたことからも、本作が2020年代のポップミュージックシーンに与え続けている影響を垣間見ることは容易だし、影響を受けた現行ポップを参照することで、80年代には気付けなかった本作の魅力を探ることも可能になると言えるだろう。

そして、リリースから40年が経過し冷静に聴くことができる現在にこそ、本作で彼らが成し得た音楽的成長と成果を先入観なく認識し、本作の再評価に繋がることを期待したい。

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2022.05.10
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カタリベ
1972年生まれ
岡田 ヒロシ
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