日本の女性は髪の毛にとてもお金をかけていると思う。
ネイルサロンが身近になったのは最近だけれども、こんなに一つの町にヘアサロンがある国ってあるのだろうか。ちなみに我が家は最寄駅から徒歩6分だけれど、駅から家までの帰り道に5軒もある。もしかしたら数えそびれているものもあるかもしれない。
ある日、いつもお世話になっている美容師さんとの会話で、日本人女性は(主にこの時はアメリカ人の女の子と比較して、という内容だった)髪の毛にお金をかけている、という話題になったことがある。というのも、なんだかんだアメリカの若い女性は元々の髪の毛が極端に癖がなければ、ワンレンだから。また、特に髪の毛の色を変えることも少ない。
確かにカナダ人である甥っ子の歴代の彼女も全員ワンレンの長い髪の毛の子だ。もちろん、大人になるにつれ、髪の毛の長さは短くなるとは思うけれど、日本人に比べたらパーマをかけたり色を変えたりする人は少ないと思われる。そして、彼女たちにはもちろん髪の毛を伸ばすのには女性らしさを強調したいというのもあるとは思うが、それと同時にナチュラル感もあるのだ。
日本人は基本的に単一民族でほぼみんなが黒髮で、クセ毛が多いとはいえはっきりとカーリーな人は少ない。髪の毛の量は様々であるけれど、色と比較的まっすぐな髪の毛のせいで重い印象が強いので、よほど綺麗なストレートヘア以外の子は扱いやすい長さに切るし、同じ黒い色であるが故か、髪型で自分らしさを表現している感じもある。しかも海外の人のワンレンと違って前髪は短く切られていて、おでこが隠れていることが多いよね。
一方、バブル期に日本で流行ったワンレンは、ナチュラルに髪の毛を伸ばしている、というわけではなく、ある人はストレートパーマも駆使しながらもワンレングスという髪型にかっちりと整えていた、と言える。そして意思あってまっすぐに長く伸ばされた髪と共にあったのは赤い口紅に代表されるようなはっきりと化粧された顔だ。
それは、アメリカ人の若い子たちが髪の毛を長く伸ばしているのとちょっと雰囲気が違う。雰囲気的にはマドンナのような化粧に黒くて長い髪だ。
だから、あのバブル期のアイコンの一つであるワンレンボディコンの原点ってなんなのだろう、とずっと思っていた。もちろん、大多数の人にとってはW浅野か今井美樹がお手本だったとは思うけれど、だったら、そのW浅野の原点って何だ? とずっと謎だった。
そして、うんと記憶をたぐっていくとデュラン・デュランのレコードジャケットにあったパトリック・ナゲルが描く女性に思い当たった。強くて意思のある視線を投げかけてくる黒髪の女性。
『リオ』のアルバムのカバーはファッション誌の『ヴォーグ』の写真などからインスピレーションを得ながら描かれたそうだが、その女性像は後のスーパーモデルにも影響を与えたのではないだろうかと思われる。
デュラン・デュランは当時大人気で、もちろん私の友達の間でもメンバーの誰が一番好きか、という話で毎日のように盛り上がったものだ。私は実は当時、なぜだかビートルズが一番好きで、デュラン・デュランが好きだったかというと、そうでもなかった。
とはいえ一応この「誰が一番好きか」のやり取りには「サイモン」で参加したが、後にデュラン・デュランが映画『007 美しき獲物たち』の主題歌を歌うことが決まった時に「(ポール・マッカートニーも 007 の主題歌を歌ったことがあるので)これでデュラン・デュランはビートルズと並んだね」と友達に言われた時に言葉に詰まり、ざわざわしたものだ。今でもやはり「並んでないよー!!!!」と叫びたい(笑)。ちなみに、どれくらいの人がテレビ番組、『しゃべくり007(しゃべくりセブン)』で挿入される音が正にそのデュラン・デュランの 007 の主題歌のものだと知っているだろうか。
だが、デュラン・デュランは魅力的なバンドであることは否定しない。むしろ彼らの音楽はユニークであり、新しいものを作ろうとしていたし、かっこよかったし、最高だ。「リオ」は彼らの人気をさらに決定づけただめ押しの一曲だった。
彼らは PV に美しいモデルをたくさん起用したが、彼女たちの強さもとても魅力的だ。アルバムのカバーで不敵な笑みを浮かべる女性、リオは今でも私たちを誘っている。ワンレン女子の親分は今でも輝きを失っていない。
2019.07.03
YouTube / Duran Duran
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