80年代を彩った数々のミュージックビデオ。MTVの影響力が増すにつれて、新しいアーティストだけでなく、有能なミュージックビデオ・ディレクターが数多く出現しました。
そんな中に、アーティスト出身のディレクターもいました。「アイム・ノット・イン・ラヴ」のヒットで知られる10ccの元メンバー、ゴドレイ&クレームです。
10ccを抜けた後、ミュージシャンとしての活動をスタートさせたケヴィン・ゴドレイとロル・クレーム。これまでにアルバムを8枚リリースしています。なかでも最初に出した「ギズモ・ファンタジア」では、ギズモという楽器(ギターに取り付けるアタッチメント)を発明し、アルバムでフィーチャーしています。
自らの楽曲のMVも制作し始めますが、この作業にも興味を持った彼らは他のアーティストのMVも手掛けます。デュラン・デュランの「ガールズ・オン・フィルム」、エイジアの「ヒート・オブ・ザ・モーメント」などで高い評価を得ますが、決定打はその後のハービー・ハンコックの「ロック・イット」とザ・ポリスの「見つめていたい」。
それぞれ素晴らしいミュージックビデオですが、私がさらに感銘を受けたのが85年に自らの作品をディレクションした「クライ」です。人の顔がどんどん他人の顔に替わっていくモーフィングという技術を世界的に知らしめた作品です。
モーフィングで有名な作品と言えばマイケル・ジャクソンの「ブラック・オア・ホワイト」ですが、この作品がベースにあることは一目瞭然で、牧歌的ながらもじわじわと盛り上がる楽曲も魅力です。
現在ほどの技術がない時代にスピードでごまかさず、逆にゆっくりとじっくりモーフィングを見せるというセンスが凄い。88年以降はコンビを解消していますが、それぞれミュージックビデオやCMを手掛け活躍中です。
10ccでは他の2名は綺麗なメロディー担当、ゴドレイ&クレームはちょっとひねくれた部分を担当というイメージでしたので、分裂後の10ccは正直ちょっと物足りない感がありました。
ゴドレイ&クレームのこの才能を見ればなんとなく納得できますね。
2016.07.13
YouTube / polydorclassics's channel
YouTube / michaeljacksonVEVO
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