「ドゥオオォォォ… また買えというのか… (;_;)?」 甘いマスク,異様に低い演奏椅子,レコーディングに特化した活動等,数々の伝説で知られるカナダのピアニスト,グレン・グールド(1932年生−1982年没)の『グレン・グールド・リマスタード~(81CD)ザ・コンプリート・ソニークラシカル・アルバム・コレクション』の発売に際して,友人がFB上でこう呟いていたのを,ふと想いだしました.
グールドの「全集」なら今までにもある.それなのにまたかぁ,という気持ちがドゥオオ… という慟哭の響きと相まって思わず笑ってしまいました.新しく出るのだから以前と異なるのは当たり前.良いものをたくさん聴きたいから期待もするけど,Boxならこれまで持っているものとダブるし安くもない.喜びに悲哀が滲む,いわばやるせない心境が伝わってきます.
なぜこんなことが起こるのでしょうか.媒体がレコードからCDに移り「きれいな音(リマスター)」が売り文句になったとか,「コンプリート(完全な)」から洩れるものがあるとか,理由を数え上げたらきりがない.編集者が全集ではわざと外しただの,アーティストを直截知っている人がリマスターを手がけただの,企画の方針で収録曲も変わる.その度にファンは購買欲を煽られ胸は高鳴り財布は乏しくなる.
さて,こんなにすごいバンドがいたのに! と北村昌士のYBO²について書いていたのですが,先日,なんともタイムリーなことにBoxが発売されました.YBO²の活動期はレコードが主で,90年代以降はぽつぽつとCD化されていました.そのうち北村さんが亡くなり(2006年)版権の問題とかもあったかと思うのですが,CDは入手が困難になり,ヤフオクでもマーケットプレイスでも,こんなんで買う人いるの? という価格でやり取りされていました.
去年偶然に,Box化のためのクラウド・ファウンディングについて知ったのですが,時すでに遅く申し込みそびれて悔やんでいたところ,Amazon上でBox発売が告知されていたので,内容も確かめず僕はカートに入れて置きました.10枚組,CD+DVD,限定版.そもそも公式アルバムがたった5タイトル,LPにして6枚(1タイトルは2枚組),その他のライブ盤が2枚しかなくて,ベスト盤2枚だから,CD9枚+DVDなら当然全部はいってるしょ,誰でもそう期待したはずです.あにはからんや…
CDの再発盤や廉価盤など媒体があればこそ,同時代の空気を吸っていなくても,後追いで発見も追体験もできます.それに全部は無理でも,より多くの音を求めるのがファン心理.作品を受け継ぎたいという志の高い人も,ちょっと試したい後の世代のリスナーも,みんながアクセスできて誰でも楽しめて情報が必要な人にはためになる,それでもってすご〜く高くなければ言うことなし.文句のでない全集はないけれど,作るには時間もお金もかかるのだから,その想いと労力が何とか報われるといいなぁとつくづく思うのです.
2016.09.09
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