8月29日

ジッタリンジン「夏祭り」ホワイトベリーもカバーした時代を超える青春のアンセム

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甘酸っぱくも儚い青春を体現するような「夏祭り」


 君がいた夏は遠い夢の中
 空に消えてった打ち上げ花火

―― という甘酸っぱくも儚い青春を体現するような名フレーズから始まる「夏祭り」は、ガールズバンド、ホワイトベリー3枚目のシングルとして2000年の8月9日にリリースされオリコン最高位3位を記録する。

当時彼女たちは、15歳〜16歳。ティーンエイジャー特有のエモーショナルで前のめりな激情を全面に打ち出しながら、これがバンドの醍醐味と言わんばかりのギターカッティングとマキシマムなドラミングが特徴的だった。つまり空を突き抜けるほど元気なバンドイメージをそのまま体現しながら、そこに相反する切なさが混ざり合って、夏の終わりの青春を象徴する1曲として、多くのリスナーの思い出の中に今も生き続けていると思う。

ホワイトベリーの「夏祭り」には、バンドを始めたばかりで楽しくて仕方がないという10代特有の、精神性がテクニックを凌駕したような美しさがあった。甘酸っぱくも儚い青春を体現するような名フレーズは彼女たちのために用意されたと錯覚するほどだった。



オリジナルは90年にリリースされたジッタリン・ジン4枚目のシングル


この曲のオリジナルは『イカ天(三宅裕二のいかすバンド天国』出身で、メジャーデビュー後わずか5ヶ月で武道館公演敢行という偉業を成し遂げたジッタリン・ジンが4枚目のシングルとして1990年8月29日にリリースしたものだ。

イカ天が象徴するバンドブームの中で、華々しくデビューしたジッタリン・ジンであるが、彼らの音楽性は流行り廃りで評価するような軽々しいものではなく、しっかりとした音楽的背景と、一貫する歌詞の世界観を持ち合わせていた。

音楽的背景として、特筆すべき点は、希代のポップメイカーであると断言してもいいソングライティングを担う破矢ジンタのメロディラインだ。どこか郷愁を感じるのに決して古くならない普遍的なメロディ。これは、ロックンロール黎明期にアメリカで活躍し、ビートルズ結成時にも大きなインスピレーションを与えたバディ・ホリーの影響が大きく見られる。

気になる人は、サブスクでもYouTubeでもいいからバディ・ホリーの音楽に触れて欲しい。リンダ・ロンシュタットもカバーした「イッツ・ソー・イージー」や「ハートビート」「エブリディ」いった代表曲には、破矢ジンタのメロディラインと同じような郷愁と、流行に左右されない普遍性を感じるはずだ。

幸せを感じることのできる心が拾い集めた、破矢ジンタの歌詞


そして、そんな音楽性にも負けず劣らず、ジッタリン・ジンの歌詞の世界観は唯一無二のものだと思う。

端的に言うのであれば、甲本ヒロトの名言である「幸せを手に入れるんじゃない。幸せを感じることのできる心を手に入れるんじゃ」に集約されている。

ジッタリン・ジンすなわち、破矢ジンタの歌詞には、幸せを感じることのできる心が拾い集めた、何気ない日常のワンシーンが散りばめられている。例えば、「にちようび」では、

 ダーリン ラムネを買ってきて
 二人で飲みましょ 散歩道
 月が昇るまで

―― と決して、どんなにお金があっても決して手に入れることのできない青春の情景を端的に描く。そして、「プレゼント」では、「あなたが私にくれたもの」として、キリンが逆立ちしたピアス、ヒステリックなイヤリング、マーブル模様のボールペン… と、興味がない人にはガラクタとも取れるかもしれないプレゼントの数々を言葉にしながら、「夢にまで見た淡い夢」「あの日生まれた恋心」といった誰もの人生に必要だとされる言葉を同列に並べる。

年を重ねた僕らが、もしかしたら遠い青春の日々に置き去りにしたかもしれない、実は生きていくにあたって最も大切な、幸せを感じる心が見事に体現されている。

ジッタリン・ジンからホワイトベリーへ継承された「夏祭り」


そして、そんな幸せを感じる心が消えかける瞬間を見事に描いたのが「夏祭り」だ。祭りの情景を事細かに描きながら、すべては打ち上げ花火のようにパッと消えてしまう。そして「君がいた夏は 遠い夢の中」というワンフレーズで、その一瞬が “遠い夢の中” つまり永遠だと教えてくれているのだ。

幸せを感じる心が散りばめられた刹那的とも言える破矢ジンタの歌詞の世界観は、この「夏祭り」で永遠へと昇華された。

1990年にジッタリン・ジンが歌った「夏祭り」の青春は2000年にホワイトベリーが継承した。10代のバンドだからこそ、この曲に内包された切なさをはっちゃけるぐらいの躍動感でリメイクした。多少荒削りな部分もあった。だからこそよかったのだ。ホワイトベリーが継承することで、「夏祭り」は時代を超えた青春のアンセムとなったのだ。

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2023.08.29
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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