2月21日

あなたが私にくれたものー♪ ジッタリン・ジン「プレゼント」の謎

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ジッタリン・ジンのミニアルバム「Hi-King」がリリースされた日(プレゼント 収録)
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みんな、過去の恋人にプレゼントされたものは、どうしておくのだろう。古着・ブランド品宅配買取業「ブランディア」には、「失恋ボックス」というサービスがある。未練の原因となっている別れた恋人からのプレゼントを、買い取ってくれるというので驚いた。

失恋した相手にもらったプレゼントを、ただただ羅列していた女もいた。ジッタリン・ジンの「プレゼント」の中の「わたし」は「あなた」がくれたプレゼントをひとつずつ数えていた。

そのプレゼントの数、24(今、歌いながら数えました)。以下、そのラインナップ。

「キリンがさかだちしたピアス」「フラッグチェックのハンチング」「ユニオンジャックのランニング」「丸いレンズのサングラス」。ここまでは、80年代後半のロックキッズの、トンガったロンドンファッションを彷彿とさせる。ボーカルの春川玲子のファッションっぽい。

「オレンジ色のハイヒール」「白い真珠のネックレス」「緑色した細い傘」「シャガールみたいな青い夜」。ここは、色シリーズ。靴なんてサイズがわからないと買えないから、一緒に買いに行ったのだろうか。

「グレイス・ケリーの映画の券」「ヴィヴィアン・リーのプロマイド」「バディー・ホリーのドーナツ盤」「ヘップバーンの写真集」。ここからその元カレ「あなた」の、映画好き、フィフティーズ好きという志向がうかがえる。ファッション系でくれたもののセンスはイギリスっぽかったのに、「あなた」の趣味はアメリカンなのか?

「お菓子のつまった赤い靴」「テディーベアーのぬいぐるみ」「アンデルセンの童話の本」「夢にまで見た淡い夢」。急に少女趣味、外人モデルばかりだった頃の80年代初頭のオリーブ少女好み。「あなた」が勝手に買ってきたとは思えないから、デートの時に買ってもらったのだろうか。

「ヒステリックなイヤリング」「ボートネックのしまのシャツ」「道で売ってるカレッジリング」「マーブル模様のボールペン」。デートしながら買ってもらったのか、その場所は、80年代の原宿っぽい。ピアスくれてたのにイヤリングもくれるのか? ヒステリックなイヤリングってなんだ? ラフォーレで「ヒスグラ」にでも行ったのだろうか。

「アメリカ生まれのピーコート」「中国生まれの黒い靴」「フランス生まれのセルロイド」「あの日生まれた恋心」。ここは、国シリーズ。購入場所は80年代の渋谷っぽい。「オクトパスアーミー」からスペイン坂上がって「大中」に行って「パルコ」にでも行ったのか。

… と、考えていくと、このプレゼントのチョイスは男だけがしたものとは思えない。「あなたがわたしにくれたもの」ではない、「わたしがあなたにくれさせたもの」なのではないか。

そしてオチがすごい。こんなにプレゼントをくれた「あなた」には彼女がいるというのだ。


 大好きだったけど彼女がいたなんて
 大好きだったけど最後のプレゼント
 bye bye my sweet darlin’
 さよならしてあげるわ


この歌が出た時友達は「プレゼント攻撃でその気にさせて、彼女がいるなんてひどいよね」と言っていた。また当時はバブルだったので別の友達は「ティファニーやヴィトンじゃないんだよ、くれるもんしょぼいよね」と言っていた。

しかし、責められるべきは男だろうか? この歌の作詞はジッタリン・ジンのギター、破矢ジンタ、男性である。私はこれは、男が女に「こんなにもっていかれた」という歌なのではないかと思っている。そして、もっていかれたのは、単に「モノ」だろうか。羅列の中に、モノ以外のものがある。


 シャガールみたいな青い夜
 夢にまで見た淡い夢
 あの日生まれた恋心


女にもっていかれたのは、男の心だったのではないか。こんなにモノをプレゼントした男、女に本当に恋をしていた。しかし、女が自分を本当に好きではないとわかったから、彼女が「さよならしてあげ」られるよう、「彼女がいるから」と言った。女はあっさり、「bye bye」。そう妄想して、無表情にクールに歌う春川玲子を見ると、ちょっと面白い。

男が送ったプレゼントは、ブランディアやメルカリにもう売られたかも。でも青い夜や淡い夢や恋心が「あった」ことは、ずっと消えない。それは、あの子がくれた「プレゼント」だったのかもしれない。


※2017年7月30日に掲載された記事をアップデート

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