70年代後半のパンクムーブメントの影響を受けるかのように動き出した日本のパンクムーブメントが「東京ロッカーズ」だった。
「東京ロッカーズ」とはもともとシリーズ・ライブのタイトルだったようだが、そのライブを収録したアルバム『東京ロッカーズ』が発売されたこともあり、そこに関わっていたバンドの総称と僕は捉えていた。
でも初めてアルバム『東京ロッカーズ』を聴いた時、僕は全く興味を持てなかった。アルバムに収録されていたのが、S-KEN、リザード、フリクション、ミラーズ、ミスター・カイトの5バンド各2曲ずつ、それぞれが個性的なバンドということもあり掴みどころがなく「なんだこれ?」程度にしか感じなかったのだ(どの曲もライブ音源だったせいもあったのかも)。
ところが不思議なことに何度か聴いているうちにだんだん気になってくる。
痙攣しながら迫ってくるフリクション。ポップなのに不気味なリザード。「爆発寸前!」と叫ぶS-KEN。
他の曲をもっと聴きたくなってくるのだけど、まだどのバンドもアルバムが発売されていなかった。もっと聴くにはライブを見に行くしかない。そう思っていた矢先に映画『ROCKERS』が公開されるという情報が入ってきた。
『ROCKERS』は上記の5バンド以外のライブに加え、ストラングラーズのスタジオライブも収録した映画だというからこれはもう見逃すことはできない。
公開は四谷イメージフォーラムで5日間だけ。実験映画や前衛映画を上映するイメージフォーラムは僕にとっては異次元の空間だ。そもそも埼玉の普通の高校生にとって、四谷にもイメージフォーラムにも行く用なんかあるわけがない。
当時、かな〜り背伸びをして辿り着いたイメージフォーラムの前には白いシャツにブラックジーンズ、サングラスをかけ無言でタバコを吸う格好いいような怖そうなお兄さんが数名。緊張しながら劇場に入るとそこにもサングラスのお兄さんが座っている。
この人たちはサングラスをしたまま映画を見るのだろうかという疑問を抱きながら観たせいなのか、僕はこの映画の内容が全く頭に残っていない。
最近入手したDVDで30数年の長きに渡り空白になったままの約70分を埋めることができた。
「東京はエネルギーを吸っているけど外に向かって発射していない。俺は発射させようと思っている」とレック(フリクション)は言う。S-KENは「ぶち破ろうぜ」と歌い、当事者にならないと何も見えてこない、と言う。
僕にこの映画の記憶が全く残っていなかったのは、自分の半径5m程度の小さい世界しか知らなかったからだろう。レックやS-KENの言っていることが理解できなかったのだ。
でも理解できなくても記憶に残っていなくても、彼らのサウンドから何かを感じ取っていたのは間違いない。ノイズのような耳障りなギターや歌は僕に何かを気づかせるサイレンだったのだ。
映画の最後に登場するストラングラーズの演奏も圧巻だ。メンバー4人中3人がサングラスをかけていた。
2017.09.26
YouTube / teketen99
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