2016年2月にザ・ジーザス&メリー・チェイン(以下、ジザメリ)がファースト・アルバム『サイコキャンディ』の再現ライブを行なった。自分は行かなかったが、SNSの評はおおむね好評で、なんだかホッとした。1985年にリリースされた『サイコキャンディ』は自分にとって目からウロコの一枚だったから。というか、ぶっちゃけ衝撃的だった。 85年の晩夏、田舎の秋田で暮らしていた自分の元に、夏休みを利用して東京に遊びに行ってきたという高校の後輩が“聴いてみて”と一枚の輸入盤12インチシングルを持ってきた。ジザメリの『You Trip Me Up』。バンド名は音楽誌で聞いたことがあったが、音を聴くのは初めて。輸入盤は当時の田舎者にはレア盤だ。それを借りた以上、なる早で返さないと…と思い、カセットテープをセットして録音OK状態に。 ところがベースのイントロの後に、すさまじいノイズが響き渡る。ちょっと待て!? レコード針がイカれたか……と思い、聴き馴染んだ他のレコをかけてみた。いや、大丈夫だ。このレコがおかしいのか? そう思ってもう一度再生してみる。やっぱりすごいノイズ。しかし最初に聴いたときには聴き取れなかったメロディが聴こえてくる。もう一度再生してみて、こういう音楽なんだと納得した。 ノイズの奥に耳を澄ますと、かっこいいロックンロールが聴こえてくる。パンクを超える、今まで聴いたことがないスゴいものを聴いてしまった……というのがジザメリのファーストインパクトだった。 直後にリリースされた『サイコキャンディ』のレビューを雑誌で読み、“レコード針の代わりに釘で聴いているよう”と評されたのは言い得て妙。CDや配信ではそんな疑問も生まれえないだろうが、アナログ時代には“オーディオ、ぶっ壊れた!”と思わずにいられなかった。同作はCD化、リマスター化の度に買い直しているが、何度聴いても、あの頃のヒヤヒヤ感とヤバい感が甦ってくる。
2016.03.25
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