11月21日

浜田省吾の「マイホームタウン」 じゃあ、お前はどう生きるんだい?

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浜田省吾のアルバム「PROMISED LAND~約束の地」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

ロックとは何か?

ぐるぐると頭を駆け巡り答えが出ない永遠のテーマを抱えながら十代を過ごしてきた。

そんなティーンエイジャーの頃、単純にロックとポップスの違いはリリックにあった。小学6年生ぐらいから歌謡曲やニューミュージックに親しみ始めたのだが、そこに描かれている世界のほとんどがラブソングだった。

例えば、ピンク・レディーを解散したばかりの MIE が、ロック歌手としてリリースしたソロ一発目のシングル「ブラームスはロックがお好き」の中で――


 唄は100のうち99のラブ・ソング
 ブラームスの時代から
 ロックンロールまで


と歌われていたように。

もちろん当時、パンクロックはもとより、プロテストソングと呼ばれる類のものを知る由もなかった。だから、そんな時、ラジオから流れてきた浜田省吾の「マイホームタウン」は衝撃だった。


 パワーシャベルでけずった
 丘の上幾つもの
 同じような小さな家
 何処までも続くハイウェイ
 彼らはそこを名付けた
 希望が丘ニュータウン
 赤茶けた太陽が
 工業地帯の向こう 沈んでく

 俺はこの街で生まれ16年教科書を
 かかえ手にしたものは ただの紙切れ


そう。浜田省吾が歌う「マイホームタウン」には絶望しかなかった。

そこで僕は目覚めた。ロックに潜んでいるものは、どうやら明るい道筋を照らす光だけではないということを… 悩みながら答えを出していくのがロックなのではないかと初めて気づいたのだ。

この曲が収録されているアルバム『PROMISED LAND~約束の地』が発売された82年当時、アメリカ人のアイデンティティを歌うブルース・スプリングスティーンや不況の中、若者の代弁者として政治を歌うザ・クラッシュの存在も僕は知らなかった。

もちろん、後に彼らのアティテュードに共鳴し夢中になっていくのだが、そんな絶望やどん底の中から「じゃあ、お前はどう生きるんだい?」と問題提起を促すロックの本質を初めて知ったのは浜田省吾の「マイホームタウン」だった。

作家の片岡義男が、アメリカの現代史になぞり、ロックの誕生からティーンエイジャーに浸透していくまでの課程を論理的に描いた名著『僕はプレスリーが大好き』の中にこんな一節がある。

「ロックは、基本的には、現実との対決だった。たとえば、夕食後の一時間をロックを聞いてすごすというような、そんな部分的なつまらないことではなかった。ロックは、生き方だった。」

つまり、ロックは現実との対決という部分では、癒しではなく、どのように人生を切り開いていくかというテーマを孕んでいるということ。それを初めて感じさせてくれたミュージシャンが、僕にとっては浜田省吾だったのかもしれない。「マイホームタウン」の曲の終盤では――


 彼女は昼間オフィス・レディ
 まるでエンジェル
 でも土曜の夜は 着飾り踊るよディスコ
 真夜中ひとり 帰り道の暗がり
 誰かがナイフ光らせ 彼女の背に


と歌われている。同じく、このアルバムに収録されている「パーキング・メーターに気をつけろ!」で、この続編ともいうべき場面が描かれている。


 どうか あの娘を助けて
 おれのナイフがあの娘の背に…
 わからない わからない
 愛していた それだけさ


絶望の街、希望が丘ニュータウンを舞台に、最悪とも言える結末を迎えるこの曲。僕は当時14歳。何不自由なく日々を過ごし、希望に溢れるラブソングだけが音楽だと当たり前のように思い込んでいた。そんな自分にとって、これは計り知れない衝撃だった。

そして、そんな僕の中でこの衝撃は、


 人波の中をかきわけ 壁づたいに歩けば
 すみからすみはいつくばり
 強く生きなきゃと思うんだ


―― と歌う尾崎豊との出会いに繋がるのだった。

オトナになればよく分かることだが、時には絶望と向き合い、憂鬱を胸に秘めながら毎日を過ごさなくてはならない。

「それでもお前はどう生きるんだい?」って語り掛けてくれるのが、自分の中のロックだって最近分かってきた。そして、そんな風に向き合ってきた人生のはじまりに、この「マイホームタウン」があったということに、実は最近気づいたのだった。



歌詞引用:
ブラームスはロックがお好き / MIE
マイホームタウン / 浜田省吾
パーキング・メーターに気をつけろ! / 浜田省吾
十七歳の地図 / 尾崎豊


2018.09.19
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  YouTube / 浜田省吾 Official YouTube Channel
 

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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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