小学生の頃、誰もが酷い悪夢にうなされて大汗をかいて目覚めたはずである。
「1999年、7の月。その時ボクは33歳。ああ、どうしたらいいんだろう。」
織田信長が生きていた時代のフランス人が書いた詩篇が四百年の時を超えて、まさかこれほどの社会不安を生み出すとは! そう、ノストラダムス本人でさえ考え及ばなかったに違いない。冷戦という米ソが対立する世相の中で五島勉氏が執筆した「ノストラダムスの大予言」シリーズ(1973-1998)は確実に社会不安を煽っていたと思う。1974年に映画化され大ブームとなり、冨田勲さんの作り上げた楽曲の神秘性も手伝って日本中の子供たちが恐怖におののいていた。
その流れでアメリカから映画「ザ・デイ・アフター」(1984年日本公開)がやってきたのだからもうたまらない。第3次世界大戦、核兵器の恐怖をリアルに描いた映像がとどめを刺した。そう、これは大予言という名の呪い。それを断ち切ってくれたのは科学の進歩だった。
1979年、無人惑星探査機ボイジャー1号が木星に最接近を果たす。今でもボイジャーから送られてきた木星の美しい映像を観ると心がときめく。惑星を取り巻く大気の動き。象徴とも言える大赤班の壮大な渦。僕たちは人類の英知を肌で感じていた。
その後、日本ではSF小説界の大御所・小松左京氏が大作映画「さよならジュピター」(1984年)を完成させる。無重力空間での男女の濡れ場やシーシェパードのような立場で登場する宇宙ヒッピーは御愛嬌。木星の姿をリアルに描くためにNASAのボイジャー計画で得た最新データを手に入れて惑星を描写したという触れ込み。映画の出来はともかくその本気度はハンパじゃなかった。
主題歌は「VOYAGER〜日付のない墓標」。ユーミンの明るい歌声が古い時代の不安感を薙ぎ払って、明るい未来の可能性を感じさせてくれた。それは、私の心の中からノストラダムスの呪縛が解かれた瞬間だった。
VOYAGER〜日付のない墓標 / 松任谷由実
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
発売: 1984年(昭和59年)2月1日
2016.06.01
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