1月25日

ブルーハーツ以前のパンクスター、戸川純に求めたアイデンティティの模索

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photo:SonyMusic  

十代の頃の自分にとって、パンクとは何だったのだろう?

そう考えたとき、思い浮かぶのは戸川純。リアルタイムでピストルズに触れるには遅すぎたし、ブルーハーツに染まるには早すぎた。その狭間を生きた高校生にとって、彼女は確かにパンクスターだった。

最初の遭遇は高校1年のときで1982年に放送された TV ドラマ、ビートたけし主演の『刑事ヨロシク』(TBS系)。戸川純は警察署の陰気な事務員を演じていたが、“つや” という役名を含めて、その異様な存在感が妙に引っかかった。そのクラさに、「つや」は “艶” ではなく、“通夜” だな、と思ったり。とにかく、今でいう “不思議ちゃん” であったことは間違いない。

そんなヘンな新進女優が翌年の TV ドラマ『あとは寝るだけ』(テレビ朝日系)に出ると知り、欠かさず観続けたのだが、これが夜9時台に放映するドラマとしては、かなりシュール。不幸な人たちを笑い飛ばすユーモアを田舎の大人は理解できず、一緒に観ていた家族は「くだらない」と思っていたようで、父はだいたい放映中に寝落ちしていた。

しかし、現在の放送規制では考えられないことだが、あるとき戸川嬢がおっぱいを露出するというとんでもない回が! 寝落ちしてなかった父は、「こんなもの、見るんじゃない!」とさすがに怒った。

怒られるとバカ高校生の反抗心は過熱するものだ。そうでなくても戸川熱が高まっていたから、当時の彼女の音楽活動にも自然と目が行く。前年にリリースされていた彼女と上野耕路のユニット、ゲルニカのアルバム『改造への躍動』を聴き込むのはもちろん、その翌年早々に出るソロアルバム『玉姫様』も発売日前にフラゲ。パッヘルベルの “カノン” に歌詞を乗っけた「蛹化の女」には感動を覚えた。

このアルバムのリリース直後、彼女は『夜のヒットスタジオ』に出演。シングルカットした曲もないのに、いったい何を歌うのだろう… と思っていたら、なんとタイトル曲の「玉姫様」。女性の生理についてダイレクトに歌ったこの曲がお茶の間に響いたとき、父の顔が曇ったのは言うまでもない。

こんなふうに、メディアを通した彼女の表現はつねに予定調和に当てはまらないものだった。当時の大人が見ると眉をひそめる、そういう類のもの。大人じゃなくても彼女はヘンに見えたし、なんだか気持ち悪い… という同級生も相当数いた。それって、なんだかパンクじゃないか?

パンクは反権力、反権威と言われてもいるが、北国の田舎に暮らす高校生にとって権威といったら、せいぜい親か先生くらいのものだ。それは誰にでもある反抗期… と言ってもいいのかもしれないが、あのとき自分はアイデンティティの模索を戸川嬢に求めていたんだろうなあ、と今となっては思う。

時を経て自分も子どもを持つ身となり、あの頃の父の気持ちがなんとなく理解できるようになった。同時に、自分のようなメンドくさい反抗期があることも理解しているので、子どもの音楽の趣味に関しては、何も意見しないようにしていた。そうすることで親が好んで聴いているパンクロックも自然に受け止めるのではないか。

―― という期待もあったのだが、皮肉にも息子は今、乃木坂に夢中になっている。


※2018年6月3日に掲載された記事をアップデート

2019.01.25
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