松田優作主演のテレビドラマ「探偵物語」。僕が中学生の頃、日テレの火曜9時枠でオンエアされていた言わずもがなの名作である。
それは僕の生き方に多大なる影響を与えたドラマと言ってもいい。その第6話「失踪者の影」についてちょっと語ろう。
中島みゆきの歌で始まるオープニングだった。失踪したカレを追いかけ、山梨の大月から上京してきた亜湖演じるキノシタレイコちゃん。彼女が工藤探偵事務所を訪れるところからドラマは始まる。
あまりにも押しの強い捜索依頼をしぶしぶ受ける(フリをする)探偵だったが、田舎娘の身を案じ、彼女を大月に帰すべく新宿駅のホームまで見送る。そのシーン全体(3分強)にかかる曲が「アザミ嬢のララバイ」、物語のトーンを決定付ける見事な選曲だ。
話のあらましを書くことは避けるが、一言で言うと「バカな女がバカな男に一方的に惚れ込んで、最終的にはバカな男を庇って死んでしまう」というダサいお話。
でもこのストーリー、全27話ある探偵物語の中でも間違いなくベスト5に入る神回なのである。
コミカルなタッチを取り入れたテンポ抜群の展開はいつものことだが、だからこそラストシーンが切ない、切なすぎる。死んでしまったレイコちゃんを乗せたメリーゴーランドがゆっくりと回る情景はテレビドラマ史上に残る名シーンであると言っても過言ではない。
そして、その切なさを包み込むように流れる曲が、木の実ナナの歌う「うぬぼれワルツ」なのである。
踊りましょうよ こんな時こそ
ラッタッタ ラッタッタ うぬぼれワルツ
あんた男前 私いい女
ラッタッタ ラッタッタ うぬぼれワルツ
—— 探偵は言う。
「人間ってのはさ、なんかこう、あの、冗談か本気かわかんない、ギリギリんとこで生きてんじゃないのかしら?」
とにかく、工藤俊作という男からは本当の優しさを教わったな。
うぬぼれワルツ / 木の実ナナ
作詞:門谷憲二
作曲:西島三重子
編曲:大村雅朗
発売:1978年(昭和53年)7月7日
2016.01.12