「80年代音楽エンタメコミュニティ」を標榜しているこのサイトで言うべきことではないかもしれないが、僕は80年代より70年代のサウンドが好きだ。 僕自身、音楽的に物心が付いたのが70年代だったことや、「ポップミュージックが純粋な音楽として存在しえたのは70年代まで」とよく言われていることなど、理由は探せばいくらでも出てくるが、本当のところは自分でもよくわからない。それに「じゃあ、70年代サウンドって何?」と訊かれたら、それはそれで答えに窮するだろう。そんなものは一言で答えられるはずなどないからだ。 そこで、僕が「いかにも70年代っぽい」と感じている楽曲を挙げてみたところ、僕なりの解答を見つけることができた。 ■スティーヴィー・ワンダー「サンシャイン(You Are The Sunshine Of My Life)」 ■カーペンターズ「トップ・オブ・ザ・ワールド」 ■ロバータ・フラック「愛のためいき(Feel Like Makin' Love)」 ■ミニー・リパートン「ラヴィン・ユー」 ■フリートウッド・マック「ドリームス」 ■ビー・ジーズ「愛はきらめきの中に(How Deep Is Your Love)」 ■スティクス「ベイブ」 実は、これらの曲には2つの共通点がある。1つはビルボードの Hot100(全米シングルチャート)で1位を獲得したこと、もう1つは「ローズ(Rhodes)」を使っていることだ。 「ローズ」とは、エレキギターで有名なフェンダー社が製造・販売していた電子ピアノのことで、当時は「フェンダーローズ」と呼ばれていた。73年にフェンダーから独立し、その後ロゴからフェンダーの文字が消えると、単に「ローズピアノ」と呼ばれるようになった。 皆さんも、ザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』の中でビリー・プレストンが弾いていたスーツケースピアノと聞けばピンと来るのではないだろうか。 どちらかと言えばジャズ・フュージョン系のミュージシャンに愛用されていた印象はあるものの、70年代にはジャンルを問わず引っ張りだこであった。 何と言っても、この音色がいい。生ピアノと比べて少し輪郭のぼやっとした優しい音で、なんだか癒される気がするし、これにコーラスやフェイザーなどのエフェクトをかけると、キラキラした都会的なサウンドになるのだった。 その点では、No.1にこそなれなかったが、10cc「アイム・ノット・イン・ラヴ」やビリー・ジョエル「素顔のままで(Just The Way You Are)」なんかもローズの良さを活かした70年代の名曲と言っていいと思う。 だが、80年代に入ると、イーグルス「言いだせなくて(I Can't Tell You Why)」やグローヴァー・ワシントン JR.「クリスタルの恋人たち(Just The Two Of Us)」を最後に、ローズサウンドは徐々に影を潜めていく。 これが、ヤマハ「DX7」のようなデジタルシンセサイザーに取って代わられたからなのか、そもそも時代のサウンドに合わなくなったからなのか、その理由は定かではないが、今も僕には残念でならないのだった。Song Data ■Babe / Styx ■作詞・作曲:Dennis DeYoung ■プロデュース:Dennis DeYoung, John Panozzo, Chuck Panozzo ■発売:1979年9月
2018.05.01
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YouTube / StyxVEVO
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