4月5日

寺尾聰「リフレクションズ」クールなサウンドと憧れた大人の世界

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photo:UNIVERSAL MUSIC  

寺尾聰の、寺尾聰による、寺尾聰のための1981年


1981年は “寺尾聰の、寺尾聰による、寺尾聰のための1年” と言っても過言ではないかと思う。そのくらいこの年の歌謡界における寺尾聰の活躍は凄まじかった。その印税でレコード会社がビルを建て、そのビルは “ルビービル” と呼ばれ、“上から読んでも下から読んでもルビービル” とか言われていた、なんて話も聞いたことがある。

寺尾聰といえば、そのルビービルの由来となる大ヒット曲「ルビーの指環」が代表作となるわけだが、私が初めてラジオでこの曲を聴いたときの印象は「念仏みたいな歌」だった。低音域から中音域あたりをさまようメロディーラインは正直退屈で、全く魅力を感じなかったし、失礼ながら「これは売れないだろうなぁ」なんて思っていた。

それに私は寺尾聰が当時出演していたテレビドラマ『西部警察』を観ていなかったので、「寺尾聰ってどこの誰やねん」という感じで、後にテレビドラマ『おくさまは18歳』の海沼先生と同一人物だということを知って驚いたくらいの認識レベルだったのである。

アルバム「Reflections」松本隆と有川正沙子が描く世界に見た “大人”


しかし、「ルビーの指環」はみるみるうちにヒットチャートを駆け登り、『ザ・ベストテン』でも12週連続第1位という記録を打ち立てるなど、私の予想とはまるで真逆の結果を残したので本当に驚いた。

同時期に「SHADOW CITY」「出航 SASURAI」とチャートにランクインし、テレビでもラジオでも寺尾聰の曲が流れまくっていたが、それでも私は寺尾聰の曲をどうしても好きになれなかった。しかし、当時リリースされたアルバムを聴いて、その頑なだった気持ちが見事に打ち砕かれたのである。そのアルバムが『Reflections』だ。

全10曲。歌の主人公の一人称は「俺」、相手の女性を「おまえ」と呼び、言葉の語尾は「~ぜ」、煙草、カンパリのグラス、トレンチ… 大人だ。大人の男だ。作詞の松本隆と有川正沙子が描く世界が、当時中学生だった私には、とてつもなくカッコよく感じられた。

 黄色い畑のうねりを見ていると
 おまえの熱い身体を思い出す
 陽よけを下ろして 抱き合う部屋では
 まるで時間さえ止まっていたぜ

 タイヤを軋ませて
 ぬけ出したParty
 誰も邪魔はできないぜ
 あなたをさらった

なんて歌詞を読んでは、「うわぁ… 大人になったらこんなことするのかぁ」などと刺激的なことを想像したりもした(笑)。

実感、飽きさせないサウンドとアダルトな世界観に必要なヴォーカル


しかし歌詞よりも私を強く惹き付けたのはそのサウンド。1曲目の「HABANA EXPRESS」はイントロからもろフュージョンで徹底的にクール! かと思うと、2曲目の「渚のカンパリ・ソーダ」はちょっとポップなロックンロール、4曲目の「二季物語」はスローなままダークに終わるのかと思ったら、後半にはオルガンをフィーチャーしたジャズテイストになるなど、全く飽きさせない構成だ。あれほど苦手だった「ルビーの指環」でさえ、なんてカッコいい音に溢れているんだ! と、全く印象が変わってしまった。

そして、「念仏みたい」と思っていたヴォーカルに対しても、このアダルトな世界観には必要なものであると感じた。ハイトーンなヴォーカルではあのクールな大人の男の世界観はなかなか醸し出せない。

「寺尾さん、申し訳ありませんでした!」と、私は心の中で何度も謝った(笑)。

時を超えても人の心を揺さぶるヒット曲の力


「ルビーの指環」のスゴさを改めて感じたのは、2015年に開催された、松本隆 作詞活動45周年記念オフィシャル・プロジェクト『風街レジェンド2015』に寺尾聰が出演したときだ。「ルビーの指輪」のイントロが流れた瞬間、その日最大の歓声が客席から沸き起こった。「ヒット曲というのは時を超えても人の心を揺さぶる力があるんだな」と思ったものだ。

長い間このアルバムの存在を忘れていたのだが、Spotifyに入っていることを知り、超久しぶりに聴いてみた。やはりそのカッコよさは変わらない。40年という月日を全く感じさせないのは、井上鑑のクールなアレンジと、ギターの松原正樹と今剛、ドラムの林立夫、パーカッションの斎藤ノブ、ベースの田中章弘、コーラスのEVE、などの一流ミュージシャンによるハイレベルな演奏によるものだろう。

2020年12月にNHK BSプレミアムで放送された『The Covers’ Fes.2020』でもこのアルバムから3曲(「HABANA EXPRESS」、「出航 SASURAI」、「ルビーの指環」)披露していたが、そのクールな雰囲気は変わらず、いや、むしろさらに磨きがかかっていたように思う。

ところで『Reflections』が発表された1981年、寺尾聰は34歳。私は今50代半ばだが、あの頃の寺尾聰のシブさにはいまだ達することができない。これから齢を重ねてもあんなカッコよさは出せないだろう。

しかし、あのシブさはいったいどこから出てくるのだろう。大人になって煙草を吸ったところで、あんなカッコよさは当然ながら出なかった…。え? 元々の素材が違う? こりゃまた失礼いたしました(笑)。


歌詞引用:
HABANA EXPRESS / 寺尾聰
予期せぬ出来事 / 寺尾聰


2021.04.05
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  Apple Music
 

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カタリベ
1966年生まれ
不自然なししゃも
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