2017年10月25日、遠藤賢司(エンケン)の肉体が滅びました。享年70、俺51。自分にとって道標的な存在だったミュージシャンの訃報が続くと、いよいよ自分の時間も残り少なくなってきたことを実感します。
日の出てるうちは暖かいけど、夕暮れにでもなると急に寒さが増す季節。そんなことを感じる小春日和の昼下がり。ともすれば感傷的な気分にもなりがちですが、エンケンの遺した音楽はそんなセンチメンタルをきっぱりと拒みます。
年を取ったとか
そういう事じゃないぜ
俺が何を 欲しいか それだけだ
遠藤賢司は不滅の男。
僕とエンケンの出会いは80年代の後半。場所は南新宿にあった小さなライブハウス「代々木チョコレートシティ」でした。
当時の僕は広告代理店に勤めながら、とあるバンドのマネージャーをやっていて、頻繁にライヴハウスへ出入りする日々。ハコのスケジュール確認や対バンを探すこと、終演後には外でチラシを配ったり。そんな目的で「代チョコ」に行ったんだと思います。
そこでたまたま演っていたのが遠藤賢司。知っていたことは、はっぴいえんどがバックをつとめたファーストアルバムと有名曲の「カレーライス」くらい。ほとんど知らなかったのに、なんでライヴを観たんでしょうね?
当日券を買って中に入ってみると、お客さんは100人もいなかったかな。良くいえば、ほどよい感じの入り具合。
ちょっとしたフォークロック?
それくらいにしか思っていなかった僕の浅はかなイメージはこのライヴで覆されるのですが、大げさにいうと僕の音楽に対する価値観が大きく変わったライヴだったかもしれません。
心眼で聴け!
歪みまくる爆音ギターのエンケンを中心に、ベースに子供ばんどの湯川トーベン、ドラムには嶋田吉隆(後に頭脳警察のトシに変更)を従えたドライヴ感溢れる激しきスリーピース=天下御免の遠藤賢司(エンケン)バンド。
かと思いきや、透き通ったアルペジオに乗せて耳元で囁くように歌う、触れたら壊れてしまいそうなガラス細工みたいなバラッド。
ニール・ヤングよりも
ボブ・ディランよりも
カッコイイ!
これは歌舞伎か格闘技か!
この人は間違いない!
それからというもの、エンケンの創作した多種多様かつ大量の音楽、いわゆる「言音一致の純音楽」に接するたび、落ち込んだり励まされたり優しい気持ちになったり圧倒されたりするわけで、なおかつ過去の作品ですらエンケンはいつだって「今」なわけで…
とても残念だけれど、このさよならをきっかけに多くの人がエンケンという存在に気づいてくれると嬉しいなって、よき弔いになるんじゃないかなって、勝手に思ってます。
最後に、
エンケンがブログに遺した文章を紹介しましょう。病床のため10月19日のステージに立てなかったことへのお詫びの言葉です。
> 貴方が命がけで稼いだ金で、僕の言音一致の純音楽への信頼込みで、優しさ=友情厚く、チケットを、購入してくれた。しかし、エンケンは、貴方の、その、エンケンの言音一致の純音楽への信頼と、優しさ=友情を、反故(ホゴ)にしてしまった。悔しい!
肉体の滅びる6日前に綴られた言葉。
ああ、こんなに嘘のない音楽家なんて……
いないよ。
2017.11.07