7月1日

シンガーソングライター岡村孝子、純朴な女子大生が “OLの教祖” になるまでの軌跡

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きら星のごとく現れた岡村孝子と加藤晴子の女性デュオ、あみん


1982年夏、前年の夏季五輪招致失敗のショックから立ち直れない名古屋に、きら星のごとく現れた女性デュオといえば、そう、“あみん” だ。

この年の春、ヤマハポピュラーソングコンテストに出場し、「待つわ」でグランプリを獲得。シニカルな感性を含んだこの片想いソングは瞬く間にヒットチャートを席巻、『ザ・ベストテン』で4週連続1位に輝くなど、あみんはスターへの階段を一足飛びで駆け上がった。

あみんがウケたのは、その素朴さにもあった。「女子大生デュオ」という形で売り出されたように、岡村孝子(タカコ)と加藤晴子(ハコ)は名古屋市の椙山女学園大学国文科に通う現役女子大生という肩書きで、学業と両立しながら芸能活動をおこなっていた。

折しも当時は文化放送『ミスDJリクエストパレード』に端を発する “女子大生ブーム” の華やかなりし時代。軽薄で下ネタも厭わない、軟派な女子大生が持て囃された。それら主流派とは正反対ともいえる質素で言葉数の少ないあみんだが、だからこそ「待つわ」の歌詞の一途さがやけにリアルで情念的に映る。

マジメで純朴な人柄は、「東京は夜中でも人が歩いていてビックリ」とか「仕事のことより今度の試験が心配」といった当時の雑誌インタビューからもうかがえる。そしてこれは “キャラ” として演じていたのではなく、まさしく彼女達の素顔そのものでもあった。

デビュー一年半で事実上の解散、短すぎる活動期間


あみんの快進撃は止まるところを知らず、「待つわ」のセールスは年内に100万枚の大台を突破。遂には年間ナンバーワンヒットの称号を引っ提げ、デビューからわずか5ヶ月にして『紅白歌合戦』出場を果たした。誰もが羨むシンデレラストーリーだが、当の本人達は必ずしもそう受け止めてはいなかった。

後に「キャンペーンで動いている間に勝手に売れた」と回想しているように、あれよあれよと芸能界のど真ん中に放り込まれた2人は、夢と現実の狭間で次第に疲弊することになる。

元々はさだまさしやユーミンのようなシンガーソングライターに憧れていたタカコが、他人の提供曲ばかりのアルバムをリリースされそうになってスタッフと喧嘩したこともあった。

そんな中で、あくまで学業優先のハコが音楽をやめて大学に戻ることを決意。タカコもパートナーを変えてまで続けるつもりが一切なかったことから、あみんはデビューからわずか一年半という短すぎる活動期間をもって事実上の解散に至ったのである。

かくして地元に戻って “普通の大学生” としての生活を再開したタカコだったが、車の免許取得や着付け教室といった他の事で気を紛らわそうとすればするほど、沸々と湧き上がる音楽への想いを抑えきれなくなっていた。

「そんな状態のとき、事務所の社長が音楽をやらないか、と声をかけてくださった。不安と、でも自分の歌を聴いてもらいたいという希望の入り混ざった気持ちで上京しました」

岡村孝子ソロで再デビュー、「夢をあきらめないで」で火がついた人気


ソロアーティスト・岡村孝子として心機一転。1985年10月にシングル「風は海から」で再デビューを果たすと、爆発的ではないものの、ゆっくりと、しかし着実に人気を拡げていった。

そして1987年、5枚目のシングル「夢をあきらめないで」が、『熱闘甲子園』をはじめとした高校野球番組のイメージ曲として使用されたことから火がつき、同年7月リリースのアルバム『liberté』がオリコンアルバムチャートで最高5位を記録。さらに翌年のアルバム『SOLEIL』では初のチャート1位を獲得するなど、名実ともに人気アーティストの仲間入りを果たしたのだった。

この頃から岡村は一部メディアで “OLの教祖” と称されるようになる。恋する女性の内面を繊細に描いた歌詞が同年代の女性達の共感を呼び、コンサートの観客も約7割が女性だったという。斉藤由貴、西村知美に高井麻巳子、女性ではないがウッチャンナンチャン・南原清隆など、芸能人のファンも多かった。

同時代に “教祖” の称号を獲得した女性シンガーソングライターといえば、言うまでもなくユーミンがその筆頭に君臨するわけだが、あちらは浮世離れしたカリスマ的な存在。一方の岡村はあくまで等身大の “女の子代表” として支持を受けた。

歌詞もバブル期ならではの浮ついた固有名詞は一切登場せず、いつの時代でも通用する普遍的なフレーズで一貫している。だからと言って個性に乏しいのではなく、とりわけ失恋ソングで垣間見せる芯の強さは岡村ならではの作家性といえよう。

急性白血病との闘病、復帰に向けて


現在の彼女は2019年に発病した急性白血病から順調に回復し、コロナ終息後のステージ復帰に向けて着実に段階を踏んでいると聞く。

かつて全国の高校球児や若いOL達に勇気を与えたように、今度はその歌声で大病と闘う人達にとっての希望の光となることを、いつまでも待ちたい。



2021.01.29
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  YouTube / SonyMusic
 

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カタリベ
1985年生まれ
広瀬いくと
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