1977年 7月25日

思いっきり泣きたい時に聴く初期の【さだまさし】名曲5選!

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思いっきり泣きたいときに聴くさだまさしの曲5選


今回のテーマは実に悩ましい。さだが手掛けた曲の数はゆうに500曲を超えていて、余りにも範囲が広いので、今回の選曲はある程度枠を設けようと思う。まずは、70年代のアルバムに限定(初期のさだまさしですね)。そして、個人的好みだけれどバラード曲に絞る。これならなんとかできそうだ。ちなみに紹介する曲順に他意はなく、ライブならこんな感じで歌ってもらいたいという妄想なのであしからず。また文中に出てくる “歌詞”は、さだの流儀に沿って “歌詩” と表記したい。

さて、泣く準備はできているかな?それでは早速はじめよう――――

「あなたが選ぶさだまさし国民投票」人気第1位の曲





「主人公」アルバム『私花集』(アンソロジィ)1978年

誰しもが、「過去に戻ってやり直せたら…」と、いまとは違う別の未来を想像したことがあると思う。人は、弱い生き物だ。心がくじけそうなとき、「あのとき別の道に進んでいたら違う人生を歩んでいたかもしれない」と、つい現実逃避してしまう。いつも笑顔を絶やさぬ明るい人でも、どこか心許ない気持ちを抱えているし、ちょっとしたことで崩れてしまいそうな不安感を心の奥底に隠していたりする… 本当は自分に自信がないのだ。

 あなたは教えてくれた
 小さな物語でも
 自分の人生の中では
 誰もがみな主人公

なんて勇気づけてくれる歌詩なのだろう。いままでも、これからも、本当は自分の人生を誰かに肯定して欲しかったのだと気づかされる。そして、それを認めるのは自分自身だとさだはこの曲で教えてくれた。頑張っている自分を自分で認めるということが、これほどまでに琴線を刺激するとは思わなかったなぁ。べらぼうに泣いてしまった。

この「主人公」は、『天晴(あっぱれ)〜オールタイム・ベスト〜』(2013年)の制作に際し「あなたが選ぶさだまさし国民投票」で、ファンから選ばれた人気第1位の曲でもある。これはもう誰もが納得の “泣ける曲” と言ってよいだろう。

ちなみに同曲が収録されているアルバム『私花集(アンソロジイ)』には、山口百恵に提供した「秋桜」をはじめ「案山子」「檸檬」、そして、ほのぼのとした楽曲「魔法使いの弟子」など人気曲がずらりと並んでいる。

美しいメロディが追憶する哀しみを温かく包み込む反戦歌、グレープ時代の名曲





「フレディもしくは三教街-ロシア租界にて‐」アルバム『コミュニケーション』1975年(グレープ)

グレープ時代の名曲。さだの母親が、若いころ日本租界で暮らした経験をモチーフに創作された物語であり、三教街で出会った恋人たちが戦争で引き裂かれるという哀しい運命が綴られている。この曲は、美しいメロディが追憶する哀しみを温かく包み込む反戦歌なのだ。

 けれどもそんな夢のすべても
 あなたさえも奪ったのは
 燃えあがる紅い炎の中を飛び交う戦闘機
 フレディ 私はずっとあなたの側で
 あなたはすてきな おじいさんに
 なっていたはずだった

歌詩に出てくる「漢口(ハンカオ)」とは現在の中華人民共和国、武漢市の一部である。タイトルにある「三教街」とは、三つの教えの街…ロシア正教、ユダヤ教、キリスト教を信仰する人たちが佇む租界地域のことで、戦争など様々な理由で祖国を追われ新天地を求めて海を渡ってきた外国人居留地を指している。この辺りの時代背景を調べた上で、歌詩に広がる物語を噛み締めてほしい。きっと「戦争がなければ全く違う人生を送れたはずなのに」という哀しいメッセージを受け取るはずだ。そんな憂いた心にやさしく寄り添うメロディと、さだの美しいハイトーンが鼻の奥をツーンとさせてくれる。戦争がもたらす不条理さを静かな涙で受け止めるしかない。

ちなみに同曲が収録されているアルバム『コミュニケーション』(グレープ)には、「無縁坂」「縁切寺」などフォーク色満点の名曲と一緒に「朝刊」が収録されている。「朝刊」の曲調は、後の「雨やどり」「関白宣言」に繋がるよね。こちらは泣ける曲ではないけれど大好きな曲だ。

病気療養がモチーフ、病室で知り合ったおばあさんとのやり取りで綴られた名曲





「療養所(サナトリウム)」アルバム『夢供養』1979年

さだ自身が経験した病気療養がモチーフであろう「療養所(サナトリウム)」。この曲の歌詩は、病室で知り合ったおばあさんとのやり取りで綴られている。

 歳と共に誰もが子供に帰ってゆくと
 人は云うけれどそれは多分噓だ
 思い通りにとべない心と動かぬ手足
 抱きしめて燃え残る夢達

聴いていた当時(中学生)は、この辺りの歌詩がよく理解できなかったけれど、最近じわじわと実感するようになってきた。子どもの頃に描いていた夢が、20代、30代と生活に追われている間に、ひとつ、またひとつと消えてゆく。僕もそうだし世間一般でもそうだろう… 50代ともなれば、やってみたかった職業にチャレンジしたくても経験はないし、その経験を積む場所も時間もない。慣れてしまった生活スタイルをわざわざリセットしてまで、かつての夢に費やす気力や体力など残っていない。さらに年老いたならば、その憧れだった夢の残像を抱きしめるだけの余生に身を委ねるしかないだろう。僕はこの曲を聴いて、そんな一抹の寂しさと厳しい現実を感じてしまった。

曲中で語られるおばあさんの日々は、側からみれば寂しい現実に映るだろう。そしてその描写には、さだ自身が病気で社会からドロップアウトしたときの疎外感も含まれている。「憐れみや同情で語れば、それは嘘になる」という歌詩は、そのとき感じたさだの忸怩たる思いだろう。そんな社会に対する細やかな抵抗が「来週から彼女の見舞客になる」というストーリーに見て取れる。たったひとりでも理解者がいるという無言のやさしさと、そこはかとない切なさの終幕に涙を禁じ得ない。この歌は、自分も病気療養で休職したときに聴いていたが、美しいメロディとさだの声に琴線を刺激されて、泣けるを超えて大泣きであった。

ちなみに同曲が収録されたアルバム『夢供養』は、女性デュオグループ “あみん” のネーミング元になる「パンプキン・パイとシナモン・ティー」をはじめ「歳時記」「まほろば」、そしてこの次に紹介する「ひき潮」など名曲揃いだ。神アルバムと推すファンが多いのも肯ける。

都会に出てきた若者が、打ちひしがれて故郷に帰るシチュエーション





「ひき潮」アルバム『夢供養』1979年

この曲のイメージはいくつも想像できるけど、僕の中では、一旗揚げようと都会に出てきた若者が、打ちひしがれて故郷に帰るシチュエーションがしっくりくる。さだが、バイオリンの腕を磨くため意気揚々と上京したのちに、そのバイオリンの道を挫折したことと、病気で止む無く故郷長崎へ帰ることになった失意の体験が込められているのは間違いない。

 都会の暮らしは鮮やかな色どり
 華やかな寂しさと夢によく似た噓と
 そんなもので出来ている可笑しい程に

 (中略)

 生きるのが下手な人と 話がしたい

望郷をひたすらに綴った美しい歌詩は、夢破れ、失意の末に帰郷を決めた切ない心の声である。「生きるのが下手な人と 話がしたい」という一文だけで、どれだけ心が荒んでしまったのかがわかってしまう。身も心もボロボロなのだ。「帰ろう、帰ろう」と繰り返す歌詩に、何故こんなにも心が締め付けられるのだろう。

さだが作曲した多数のナンバーと比べても飛び抜けたハイトーンが聴ける曲で、とくに後半のハミングは楽器が奏でる音に同調するほどの美しい響きだ。しかもこれをそのままライブで再現するのだから驚きである。メロディも声も美し過ぎて、もうそれだけで号泣ものだ。個人的にはライブのラストを飾るにふさわしい壮大なバラードだと思っている。

出来るならばアンコールの大トリで歌って欲しい名曲バラード





「つゆのあとさき」アルバム『風見鶏』1977年

僕の願望だけど、出来るならばアンコールの大トリで歌って欲しいという意味を込めてこの曲を最後に紹介したい。とにかく美しい歌詩の極みであり、輪をかけて美しいメロディがこれでもかと演出する。フィナーレに相応しい名曲バラードである。

 めぐり逢う時は 花びらの中
 ほかの誰よりも きれいだったよ
 別れ行くときも花びらの中
 君は最後までやさしかった
 
 梅雨のあとさきのトパーズ色の風は
 遠ざかる 君のあとかけぬける

別れの曲である。この美しい歌詩… 恋人との出会いと別れを、学校の入学式と卒業式に見立てている。まさに春だ。ただ、この物語の季節はファンの間でも意見が分かれていて、「なんで花びらが散る季節に “梅雨” なんだよ!」という意見をネット上でいくつも発見した。なんとも悩ましい限りである。

―― ということで、深読みマスターの僕がこの歌詩の構造を分解して解説しよう。

この曲は、別れの回想と現在の気持ちという二段階で表現されている。彼女との別れは春の出来事だが、その時の涙を梅雨に見立て振り返ったいまは、爽やかな風が吹く五月くらいではなかろうか。「遠ざかる君」とは、彼女との別れと、それを消化するに要した時間というふたつの意味がある。本当は彼女のことを嫌いになったわけではなく、何か理由があって別れることになったのだろう。好きの心を抑えて別々の道を選んだ狂おしさを乗り越えるには相当な時間が掛かったはずだ。

その彼女のあとを駆け抜ける「トパーズ色の風」とは、まさしく追い風というエールの比喩だ。トパーズは様々な色相を持つ石であり、その色によって、“純粋” “成功” “希望” など意味が変化する。つまり、彼女が進むこれからの人生に彼はエールを送ったのだ。さだは、別れをただの傷心で終わらせるのではなく希望に繋がる物語として描き、そのタイトルを「つゆのあとさき」としたのだ。なんて美しいのだろう。その美しい歌をさだが全身全霊で熱唱する。温かい涙が止まらなくなるのは必然である。

さて、「つゆのあとさき」をライブで聴くと、さだまさしの印象がガラッと変わる。最近のテレビで観るさだまさしは陽気な面白おじさんだが、まだ20代のさだまさしは瘦せこけたひ弱な青年のイメージだ。ところがだ…おっと、この後は熱唱するライブ音源を聴いた人だけが堪能して欲しい。さだまさしオフィシャルYouTubeチャンネル『1000回記念コンサート・ライヴ』Vol.3(1985年6月21日収録)をぜひ聴いてくれ。間違いなく泣けるから。ちなみに同曲が収録されたアルバム『風見鶏』には、「吸い殻の風景」「晩鐘」そして大人気曲「雨やどり」が収録されている。

今年の紅白歌合戦に出場するさだまさし


どうだろう… 異論反論は大いに結構、この機会に初期さだまさしのアルバム曲を聴いて盛り上がって欲しい。できることならTikTokなどショート動画に慣れている世代にも聴いてもらって、ゆるやかに流れるメロディを堪能してくれたらいいなと思う。ここで紹介した曲もそれ以外も全て “さだメロディ” とも言える不変の音楽であり、人の心に直接響くはずだからだ。

今年2023年開催の『第74回紅白歌合戦』に選出されたさだまさし。「僕たちの音楽に出来ることは、心が弱っている方たちへの心からのエールを送ることだと思います。誰かの元気と勇気のために精一杯歌います」とメッセージを寄せてくれた。

音楽業界に訃報が続く昨今だが、まだまださだまさしには第一線で活躍してもらわなくちゃ困る。もっともっと僕らに美しいメロディと歌声を聴かせて欲しいのだ。

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2023.12.04
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1962年生まれ
ヒデ
異論なし❗珠玉の名曲揃いですね。「主人公」で始まり「つゆのあとさき」で終わる。なんて素晴らしいコンサートでしょう。ほんとうは「歳時記」も入れて欲しかったけれど。
ちなみに風見鶏に収録されているのは「雨やどり」ではなく「もう一つの雨やどり」ですね。
2023/12/05 03:48
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返信
カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎たかはしみさお
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