今年は大物ミュージシャンの死が多く、音楽ファンとしては非常に残念で悲しむばかりですが、デヴィッド・ボウイ同様新作をリリースしたばかりのレナード・コーエンが亡くなってしまいました(その数日後にはレオン・ラッセルの訃報まで!)。82歳とはいえ、ここ最近は2年ごとに新作を出していただけに(最新作を含めた3作は過去の名作以上ともいえる傑作!)言葉を失うばかりです。
彼の存在を知ったのは80年代中頃。私の敬愛するニック・ケイヴがソロデビュー時にアルバムの冒頭でレナードの「アヴァランチ」をカヴァーしていたことや、私の好きだったインダストリアル・バンドがレナードの「フー・バイ・ファイアー」をカヴァーしていたり、私のフェイバリットバンドでゴスロックの代表格でもあったシスターズ・オブ・マーシーのバンド名がレナードの曲名であったりしたことなどから、レナード・コーエンには大変な興味がありました。
そんな折、彼の新作『ロマンシェード(I'm Your Man)』(88年作)に出くわしたわけです。加えてベストアルバムも購入しました。
『ロマンシェード』の感想は、彼の独特の歌世界がまだあまり理解できず、「ボブ・ディランとセルジュ・ゲーンズブールを混ぜたような渋いジジイ(当時54歳)のうた」というような印象でした。今思うと酷い感想なんですが、冒頭の「ファースト・ウィ・テイク・マンハッタン」や「エヴィバディ・ノウズ」「タワー・オブ・ソング」などはトム・ウェイツのアイランドレコード期に通ずるような異国ムード漂う、中毒性のある楽曲でけっこう愛聴してました。
同時に購入した『ベスト・オブ・レナード・コーエン』は、前述の「フー・バイ・ファイアー」「シスターズ・オブ・マーシー」を収録しており、他にも後にメル・ギブソン主演の映画「バード・オン・ワイヤー」の主題歌としてネヴィル・ブラザースにカヴァーされた同名曲、ベックやジョン・ケイルなどにカヴァーされた「さよならマリアンヌ(So Long, Marianne)」などなど傑作曲ばかり。いずれもレナードの歌を基調としたシンプルな作風ですが、それだけに曲の良さが引き立ちます。当然こちらの盤をよく聴いていたら『ロマンシェード』もぐっと良く感じましたね。
そんな『ロマンシェード』の良さに呼応したのか、ニック・ケイヴやピクシーズらのオルタネティヴ系アーティストやR.E.M.、ジョン・ケイルらによるトリビュート盤『I’m Your Fan』(I’m Your Manをもじっている)が91年にリリースされ、これも大変愛聴させていただきました。
さらに当時としては、珍しく2つ目のトリビュートアルバム『タワー・オブ・ソング~レナード・コーエンの唄』が95年にリリースされます。こちらは、ドン・ヘンリー、エルトン・ジョン、ボノ(U2)、スティング、ピーター・ガブリエル、ウィリー・ネルソンなど大御所が参加。レナード・コーエンのミュージシャンズ・ミュージシャンぶりがうかがえますね。
そんなビッグ・アーティストからの礼賛にもかかわらず、当時のレナード・コーエン自身の人気が通好みの域を出なかったのが残念です。
(つづく)
2016.11.28
YouTube / LeonardCohenVEVO
YouTube / LeonardCohenVEVO
Information