多くのミュージシャンから敬愛され、カヴァーも数多いレナード・コーエン。94年にはこれまでレナード・コーエンのことを知らなかった人まで知らしめる決定的なカヴァーが生まれました。ジェフ・バックリィによる「ハレルヤ」です。
フォークシンガー、ティム・バックリィの子息で、デビューアルバム『グレイス』が大ヒット、まさかの3年後の急逝により、その『グレイス』が唯一のスタジオアルバムとなってしまいました。シングルとしては「ラスト・グッドバイ」などがヒットしたのですが、レナード・コーエンのカヴァー「ハレルヤ」の名演が話題となり「ハレルヤ」のカヴァーは彼の代名詞ともなりました。そして彼の死から10年後、「ハレルヤ」はシングルカットされるのです。
ジェフ・バックリィ以外にも「ハレルヤ」のカヴァーをするアーティストは多く、2枚のトリビュートアルバムからはジョン・ケイル、ボノ(U2)がそれぞれ素晴らしいカヴァーを披露しています。個人的にはジェフ・バックリーを追悼したルーファス・ウェインライトによるカヴァー(2003年)もおススメです。それ以外にも本当に数多くのアーティストに、また数多くの国々でカヴァーされており、ロック界のスタンダード、またはロック界の「アメイジング・グレイス」とでも表現したほうがいいかもしれません。
オリジナルは84年のアルバム『哀しみのダンス(Various Positions )』に収録。意外にも彼の活動の最初のピークでもある70年代の作品ではないんですね。ですので75年にリリースされたベスト盤には「ハレルヤ」は当然収録されてません(新装盤に収録)。キャリア全般に良作が多い証でもあるでしょう(最近の3作は本当に傑作!)。
レナード・コーエンは、詩人としての評価も絶大です。訳詩だけでは完全に理解できませんが、やっぱり素晴らしい。彼独自の宗教観によって紡がれる神話と愛の世界は難解でもあり、親しみやすくもありました。時に崇高的でもあり、官能的でもありました。もしディラン以外にミュージシャンでノーベル賞をとるならというアンケートで、レナード・コーエンやトム・ウェイツの声が多かったという海外の音楽誌のニュースを最近見ましたが、なるほど頷けます。
有名なワイト島のライヴや昨今のライヴ作品などで見る限り、ライヴも素晴らしい。ヴァン・モリソンのような迫力の歌唱で魅せる人ではないですが、まるで詩を朗読するようにやさしく、情感を込め歌うさまはじわじわとした感動を呼びます。
来日公演をおこなうことがなかったのが日本での知名度を広げなかった要因でもあると思いますし、彼を見ることができなかったのも残念でなりません。ただただ彼の功績に、ハレルヤ!
2016.11.29
YouTube / LeonardCohenVEVO
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