6月9日

ドッキリ!夢・体・験 安田成美の魅力を開花させた初主演映画

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ほかのアイドルとはひと味もふた味も違った安田成美の魅力に気づいたのはいつのことだっただろうか。

デビュー作となった1982年のドラマ『ホームスイートホーム』(日本テレビ系)はドラマ自体観ていなかったし、翌年の『松本清張のゼロの焦点』も『外科医 城戸修平』(共にTBS系)もしかり。となるとやはり84年のアニメ映画『風の谷のナウシカ』のイメージソングで歌手デビューした時かと思ったが、その存在を知ったことはたしかだが、まだ綺麗なコがいるなくらいにしか思っていなかった。

そこで『トロピカルミステリー 青春共和国』である。この赤川次郎原作の青春ミステリー映画は、青田浩子と坂上忍主演の『月の夜 星の朝』との同時上映で、84年6月9日に東宝系で公開された。当時、東宝の配給作品はほとんど観に行っていたので、この2作品も封切られてすぐに有楽町の千代田劇場で観た。チラシなどの宣材を見ても『月の夜 星の朝』の方がメイン作品だった様で、それは新人の青田浩子が、元ジャイアンツの青田昇の娘という話題性からだったろう。

しかし自分の興味は『トロピカルミステリー 青春共和国』に向いた。それは主演の安田成美が圧倒的な輝きを放っていたからだ。可愛いさより美しさが際立っていたが、演技にはまだ初々しさもあって、何より声がいい。

当時まだ17歳だったはずだが、アイドルというよりモデル然としていた。映画館を出た私は、その足でエンディングテーマに使われた「トロピカル・ミステリー」を買いに走った。デビュー曲「風の谷のナウシカ」では優等生っぽさしか感じられなかったのに、セカンドシングルの「トロピカル・ミステリー」にはほのかな色気が漂っていた。

映画はオープニングテーマとなった桑名晴子の「I LOVE YOUがGOOD!!」で始まる。共演の竹本孝之が好演を見せ、ベンガルや山田隆夫のいわゆるコメディリリーフ陣が脇を固めていた。『スネークマンショー』の桑原茂一がラジオパーソナリティー役で登場し、謎の共和国にまつわるハガキを紹介するシーンは今となってはなかなか貴重ではないだろうか。

そして、殿山泰司や長門勇、“大統領” 役の宍戸錠らベテラン勢も出演シーンは少ないながらもさすがの存在感を放っており、当時の日本映画界の層の厚さを物語っている。

監督は日活(当時は “にっかつ” 時代だった)育ちの小原宏裕。ロマンポルノを量産していた氏が会社を離れ、初めて挑んだ一般作だったと思う。そのせいか、武田久美子、矢野有美らの女優陣はみな綺麗に撮られていた気がする。ポスターなどに掲げられた “ドッキリ! 夢・体・験” という惹句は、当時にしてもいささか「ダサイな」と思わされたが、これは監督の責任ではない―― ともあれ安田成美に感じたときめきは、若手女優では薬師丸ひろ子以来だったかもしれない。

そうなると元来の収集欲が沸き出て、関連グッズを集めなくては気が済まなくなる。映画用にカバーが写真仕様のものに掛け替えられた『青春共和国』(徳間文庫)の文庫本を手始めに、シングル「トロピカル・ミステリー」と同時発売されていたファーストアルバム『安田成美』も購入。同じことを都内で考えていた野郎が多かったのか、店頭在庫がなかなか見つからず、レコード店を何軒か回った後に新宿のテイトムセンでようやく入手したのを憶えている。

徳間ジャパンから出されていたLPは高橋幸宏プロデュースによる音楽性の高いアルバムであった。デビュー曲「風の谷のナウシカ」が細野晴臣作曲だったから、YMO 人脈というのは自然な流れで、メインとなった高橋の作・編曲作品は後に “テクノ歌謡” として再評価の対象となる。鈴木慶一作曲の「Sueはおちゃめなパン屋さん」はタイトルだけでもうやられた感じ。アルバムにも収録された「トロピカル・ミステリー」は松本隆と大村雅朗コンビによる作詞と作曲で、同時期の松田聖子ワークスを彷彿させる。

続いて出されたシングル「透明なオレンジ」「銀色のハーモニカ」「サマー・プリンセス」は正直言って当時は美しい彼女のご尊顔を愛でるためのジャケ買いであったが、今改めて聴くと、南佳孝、林哲司らによるシティポップ調のメロディと相俟った聡明な歌声に癒される。

同じ年には、菊池桃子、岡田有希子、荻野目洋子らもデビューしていたが、安田成美はギリギリまだ十代だった自分にとって特別な存在のアイドル女優なのであった。

ひろ子サマ、浮気しちゃってごめんなさい。

2018.06.09
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カタリベ
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鈴木啓之
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