3月21日

特別だった土曜日の夜、オレたちひょうきん族と EPO の DOWN TOWN

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「土曜のイヴは六年来ない。」(積水ハウス / 岩崎俊一 / 『コピー年鑑1989』より)という名キャッチコピーがあるように、昭和の人にとって「土曜日」というのは、今でもどこか特別な雰囲気に満ちているはず…

それはまだ土曜日が半ドンだった僕の中学生時代(※注1)。当時の土曜日は、お昼過ぎから夕方遅くまでが部活動の時間だった。バスケ部だった僕ら一年生は、中腰で「ファイッオー! ファイッオー!」とか声出しばかりなのに、何故か根性論だけしっかり教え込まれるという、それはもう先輩後輩の上下関係がとにかく厳しい日々でもあった。

暗くなって部活動が終わり… 疲れ切った身体… でも「明日は日曜日だぜ! イエーイ!」というその事実だけで急に身体が軽くなるという、土曜日って、そんな特別な原動力を持っていて… これ、みんなそうだったよね?

学校から大急ぎで家に帰ってきて、慌ててご飯をかきこみ、そしてTVのチャンネルを合わせる。もちろん『オレたちひょうきん族』を観るために他ならない。

TV画面から次々と繰り出されるギャグやコントの数々… 散々大笑いしたあと、ほんの少しだけ「ああ土曜日が終わっちゃうなあ」と、僕は番組のエンディングを眺めながら毎度真顔になっていた。

本当は明日の日曜日が楽しいはずなのに何故かちょっぴり寂しさが伴う感じ… なんとも不思議である。その誰もが感じるキュンとした胸の内が EPO の歌う「DOWN TOWN」に切なさのエッセンスを加えたのだろう。

少し振り返る。

まだ始まったばかりの新番組… そんなお笑い番組のエンディングに、到底似つかわしくないと思われる EPO のよく通る歌声を採用したことは、いま思えば大英断だろう。

なんでも番組のスタッフから EPO の所属事務所に直接打診があったそう。ただ想像するにスタッフは最初、山下達郎さんにお願いしたのではなかろうか? 対してシュガーベイブの大人気曲を、まだ名もなきお笑い番組に提供するなんてTV嫌いの山下達郎さんが許すわけもなく、そういえば! というその流れで EPOを紹介したのかな? と、つい勘ぐってしまう。これ、あながち外れでもないんじゃないかな。

その後人気番組となった『オレたちひょうきん族』は、次々と名曲を世に送り出す別の顔を持った番組としても時を重ねてゆき、そしてその事実は紛れもなく、僕らの青春そのものとして大切な付箋のひとつになったのだ。

ではお待ちかね、お笑い新時代を予感した1980年には他に何が起こっていたのかな?… ざっと振り返ってみよう。

EPO がシュガーベイブの「DOWN TOWN」をカヴァーしてソロデビューしたのは1980年3月21日。

この頃は、人の曲をカヴァーするという観念がまだまだ希薄だった時代である。当然のごとく楽曲提供に難色を示すと思われた山下達郎さん。ところが本人から、「やりたきゃどうぞ」とすぐに返事。あっさり快諾と相成ったのだからそれはもう驚きである。やはり事前に提出したデモテープの声が魅力的だったんじゃないかな?

フジテレビはと言うと、同年『THE MANZAI』を、四半期毎のレギュラー番組として放送を開始し、昼12時からは『笑ってる場合ですよ!』(※注2)を始め、この辺りから型にとらわれない若手漫才師たちが次々と世に放たれて日の目を見始めたのだ。これはきっと、今は亡き横澤プロデューサーの見識の深さでもあろう。

今では大御所のビートたけしさんもツービートとして活躍。明石家さんまさんを始め、B&B、島田紳助・松本竜介、ザ・ぼんち、西川のりお・上方よしお、おぼん・こぼん などなど… 当時ドリフか? 欽ちゃんか? の、二択だった僕らにとって、この漫才ブームは大変な刺激だった。

そして、その勢いそのままに翌81年5月土曜のゴールデンタイム、『欽ドン!』(※注3)に変わって『オレたちひょうきん族』が始まったのだ。(ちなみにこの当時はまだ隔週特番枠だった)

さて、この『オレたちひょうきん族』で、一番知名度がある人気キャラクターと言えば、「強きを助け、弱きを憎む」のキャッチフレーズでお馴染みの「タケちゃんマン」だろう。

「あ、鳥だ! 飛行機だ! いや、タケちゃんマンだ!」

というスーパーマンのパロディーのOPは馬鹿馬鹿しさ全開でキレッキレなのである(しかもこの映像は一般人の協力を得て毎回作られていた)。

調べてみるとこの「タケちゃんマン」、存在感が群を抜いているので番組当初からあったキャラクターだと思われがちだけれど(正直僕もそう思っていた)驚くなかれ、登場したのはなんと第8回放送(8/29拡大放送)からなのだ。

それは僕が中学生最後の夏休み、8月の終わりに悪友と共に人生初である憧れのブルートレインに乗って旅行した、神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81 3/20~9/15)の頃と時を同じくする。友情真っ盛り! これホント良い思い出なんだよなぁ… おっと脱線。

そしてこの「タケちゃんマン」の敵キャラとして登場するのが、明石家さんま扮する「ブラックデビル」である。

さんまさんは今でもこのブラックデビルの喋り方で笑いを取りに行ったりするので、本人もきっと大好きなキャラクターなのだろう。ブラックデビルの後も、さんまさんは「ナンデスカマン」など、数々のキャラクターを発生させては僕らを笑いの渦へ巻き込んでいってくれたのだ。

…いかん、いかん。話が尽きない。このままだとお笑い一色になってしまいそうなので『オレたちひょうきん族』についてはまた別の機会に。主題は「DOWN TOWN」である。

イントロから別物にアレンジされていて、泥くさかったシュガーベイブの「DOWN TOWN」とは一線を画す洗練さ。このシンセサイザーのピコピコと POPチューンされた楽曲に、伸びのあるストレートな EPO の声が本当よく似合うのだ。

デビューしたてのころ、東京女子体育大学出身であり、背が高くスタイル抜群だった彼女は、水着のグラビアをやったり、ひょうきん族の「とあるコーナー」に出演させられたりしたけれど、これについては本人が後日談として語っていて、かなりの黒歴史だそう。

本来 EPO は、竹内まりや、大貫妙子と並んで称される歌とコーラスの天才であって、当時から才能豊かなバリバリのアーティストだったのだ。デビュー直後からクセのない歌声は数多くのCMソングでも重宝され、また、良いと思った曲を次々とカヴァーしては発表するので、その頃は街中に EPO の歌声が溢れかえっていた。

86年には、原由子さんの産休期間に際しサザンの桑田佳祐さんが結成した KUWATA BAND にコーラスとして参加。これには正直驚いた。もちろんその存在感をしっかりと見せつけたライブ映像を、僕は何度も繰り返し再生したことは言うまでもない。

さて、この EPO の「DOWN TOWN」。『オレたちひょうきん族』のエンディングでスタジオライブバージョンが放送された時期があった。

確か、エンディング映像の最初と最後にチラっとしかバンドの様子が映らなかったように記憶しているけれど、実はこれ驚いたことにこのためだけのものであって、なんとこの演奏はレコーディングされていないという。このあたりのノリも1980年代ならではかもしれない。

2018年、世の中「華金」なんていって、今や金曜日に主役を譲りつつある土曜日だけれど、僕らはまだまだ土曜日の夜が大好きなんだ。

さあみんな!プレミアムフライデーもいいけれど、土曜の夜も DOWN TOWN へ繰り出そうよ!


注1:
半ドン=午後が休みである日。1992年に第2土曜日が休みに、3年後の95年に第4土曜日も休みに、その後小中学校が2002年、高校は2003年より土曜日授業が廃止。

注2:
『笑っていいとも!』の前身番組で、当時人気絶頂の B&B が司会を務め「もみじまんじゅう!」などのギャグが大ヒット。明石家さんまさんが東京進出したのもこの頃。

注3:
『欽ちゃんのドンとやってみよう!』の通称。欽ドン!は『欽ドン! 良い子悪い子普通の子』として月曜日へ移行。野球中継に邪魔されない曜日移動は萩本さんの意向があったのでは? もちろん移動後も相変わらずの人気を誇っていた。


2018.03.17
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  YouTube / 必殺仕事人・組紐屋の竜


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カタリベ
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