6月25日

90年代に特化した「筒美京平ソングベスト10」輝かしきヒットメーカーの美学!

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日本を代表するヒットメーカー、筒美京平


今日10月7日は作曲家・筒美京平の命日。2020年に80歳で世を去って2年の三回忌にあたる。

1966年の作曲家デビュー以降、歌謡曲の世界において実績・名声共に日本を代表するヒットメーカーであることは間違いない。作曲を手がけた作品が、1960年代から2000年代まで、5つの年代連続でチャート1位を獲得するという驚異的な記録を保持している。

グループサウンズや女性ポップスのヒットを放ち始めた1960年代、「また逢う日まで」と「魅せられて」で2度のレコード大賞を受賞した1970年代、アイドルへの作品提供を中心に再び黄金時代を迎えた1980年代。そして1990年代になっても衰えぬ才気で多くのヒットを連ねた。

70~80年代に比すれば作品数は減ってはいるものの、それまでが多すぎたわけで決して寡作ではないのだ。そこで、自身が50代を迎えて円熟を極めた1990年代の作品から10曲をピックアップ。ジャンルも曲調も実にヴァラエティに富んだ作品群である。

八月の恋 / 森高千里


1991年6月25日リリース。
南沙織「17才」のカヴァーヒットでブレイクした森高に、筒美が唯一書き下ろした作品。誰よりも歌手の “声” をイメージして作曲にあたる筒美が提供したのは、大人っぽく優しいメロディで、60~70年代の歌謡ポップスを彷彿させる。

夏の終わりは恋の終わり。愁いを帯びた歌声が、躍動的な「17才」とはまた違う魅力を醸し出している。

ときめいて / 西田ひかる


1991年8月7日リリース。
西田にとって初めてチャートのトップTOP10入りを果たした作品。明るく突き抜けた楽曲は、帰国子女であり、航空会社のキャンペーンガールでデビューした、元気ハツラツなキャラクターと合致していた。

主演ドラマ『デパート!夏物語』の主題歌としてテレビから毎週流れされたのも、ヒットの要因となっただろう。また本作のヒットで第42回NHK紅白歌合戦にもこの曲で初出場を果たすなど、歌手としての代表作となった。次のシングル「めぐり♥あい」も続けて松本×筒美コンビが手がけている。

泣いてないってば / 裕木奈江


1992年11月21日リリース。
1993年のドラマ『ポケベルが鳴らなくて』の役柄から、ウェットなイメージばかりが取り沙汰されてしまう彼女であるが、個人的にはその前年に出演していた小林信彦原作のドラマ『ウーマンドリーム』で、スターを目指して奮闘する姿の方が印象深い。

歌手としてのデビューとなった(実はその前にプレデビュー盤が1枚あるが)本曲も挿入歌に使用された。細かな心理描写が綴られた秋元康の詞が感情たっぷりに歌われ、女優ならではの強い説得力がある。独特の存在感を認めた酒井政利氏が自らプロデュースを名乗り出たという話にも納得させられる。歌手として最後のリリースとなった1995年の『ALAMODE』も、歌謡曲のパロディ要素が色濃く面白いアルバムだった。

人魚 / NOKKO


1994年3月9日リリース。
90年代の筒美作品を代表する傑作。ストリングスが駆使された導入部から惹きつけられる。個性的なNOKKOのヴォーカルはもちろんのこと、幻想的で浮遊感に溢れる新鮮なアレンジを施したテイ・トウワと清水信之の役割も非常に大きかった。

しかしなによりも、50歳を超えた筒美がこの瑞々しいメロディを生み出していることに感心させられるのだ。安室奈美恵をはじめ多くの歌手たちにカヴァーされ、J-POPのスタンダードとなっている。



TENCAを取ろう! -内田の野望- / 内田有紀


1994年10月21日リリース。
筒美にも匹敵するくらいのポップスセンスを備えたメロディメーカーでもある広瀬香美が作詞を手がけた、天才同士のコラボ。期待の新人だった内田のデビュー曲ということもあってチャート1位を獲得した。

元気でボーイッシュな当時の内田のキャラクターに合わせた前向きな詞とメロディ。後に『踊る大捜査線』の音楽で名を馳せることになる松本晃彦がアレンジを担当していた。内田は決して歌唱力に恵まれているとは言えないまでも、筒美が嫌いな部類の声質ではなかったはず。次なるシングル「明日は明日の風が吹く」も続けて作曲している。

強い気持ち・強い愛 / 小沢健二


1995年2月28日リリース。
筒美が亡くなった後、小沢がツイッターに上げたこの曲と筒美京平氏に関する思い出はなかなかに生々しいものだった。年齢、キャリア関係なく、対等な関係で曲作りに向かい合ったことが伝わってくる内容。アレンジに二人の名前が併記されていることに象徴されている。

曲は筒美が得意とするディスコ調で平山三紀(現・平山みき)や郷ひろみへの提供作の延長線上にあるものと思うが、いわゆる歌謡曲にはない敷居の高さを感じてしまい、当時はあまり積極的には聴かなかった。が、改めて聴くとその完成度の高さに圧倒させられる。これぞ90年代の筒美京平。



タイムマシーン / 藤井フミヤ


1995年4月21日リリース。
80年代までの筒美の仕事は、橋本淳や阿久悠、松本隆ら職業作家と組んでの曲作りが大半であったが、90年代になると、NOKKO「人魚」や小沢健二「強い気持ち・強い愛」のように、歌い手本人の作詞によるものも目立つようになる。

これもそのひとつで、当時の若手アーティストと、ベテラン筒美とのコラボレーションが興味深い。自身の作詞ということもあってか、リラックスしたフミヤのヴォーカルは終始軽やかでポップ。KUDOと辻剛による瀟洒なアレンジと相俟って、とにかく華やかな楽曲である。



BEAUTIFUL GIRLS / 小泉今日子


1995年11月1日リリース。
フジテレビで主演した月9ドラマ『まだ恋は始まらない』主題歌。相手役の中井貴一とことごとくのスレ違いでなかなか出逢えないというシチュエーションが曲にも反映されてドラマティックな展開に。服部隆之によるストリングスとブラスのアレンジが曲をスケールアップさせている。

90年代は自身の作詞で様々な若い才能とのコラボを展開していたキョンキョンが、「水のルージュ」以来の筒美作品でまた新たな一面を垣間見せてくれた、チャーミングな作品であった。



恋のルール・新しいルール / ピチカート・ファイヴ


1998月1月21日リリース。
筒美メロディの魅力を誰よりも理解していたであろう小西康陽とのタッグが実現したことは、歌謡曲にとって幸福な出逢いであった。ジャケット写真からして、ピンキーとキラーズを模した、歌謡曲愛に溢れたもの。

なにしろ曲誕生の経緯が、筒美の作曲活動30周年に際してのCDボックス『HIT STORY』リリースを記念してのものだったわけで。小西のアレンジには過去の筒美作品へのリスペクトが溢れている。

歌詞に筒美の名パートナーである作詞家・橋本淳の作品タイトルが散りばめられているのも堪らない。オザケンとはまた違った角度からの渋谷系との融合は、野宮真貴のキュートなヴォーカルにとどめを刺す。

やめないで,PURE / KinKi Kids


1999年2月24日リリース。
90年代にギリギリ滑り込んだのが、KinKi Kidsの6枚目となるシングル。かつて近藤真彦のヒット曲を多数手がけた、伊達歩こと伊集院静が作詞を担当している。堂本剛主演のドラマ『君といた未来のために~I'll be back~』の主題歌に起用され、主人公の心情と絶妙にリンクした、せつないラブソングが生まれた。

その後もたくさんのヒットソングを連ねてゆくKinKi Kidsだが、この頃はまだ初期で少年っぽさが際立っており、その繊細さがまた曲にリアリティをもたらしている。




―― 70年代から80年代にかけての変化は、かつては多くの作品で作曲と共にアレンジも手がけていた氏が、作曲のみにとどまり、アレンジを他者に委ねるようになっていったこと。多作による物理的な事情や、信頼出来るアレンジャーとの出逢いなど様々な理由があろうが、その場合でもアレンジについて細かい指示を出すことが多かったという。

90年代にはさすがにその機会も減って、ここに挙げた10曲のアレンジでは、唯一「強い気持ち・強い愛」に小沢健二と連名でクレジットされているのみ。それでも熟練された筒美メロディには、屈指のヒットメーカーならではの美学が貫かれており、輝きを失っていない。作曲家・筒美京平の名はこれからもますます高まってゆくはずだ。

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2022.10.07
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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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