誰しも一番最初に買ったCDは覚えているのではないだろうか。
子供のころにウルトラマンのレコードを買ってもらったり、CHAGE & ASKAのカセットテープを買ったりはしていたが、CDはこの曲が初めてだった。
西浦達雄さんの「瞬間(とき)」。
関西で高校野球好きな方ならきっとご存知だろう。西浦達雄―― 1987年から実に28年間にわたって、ABCテレビの全国高等学校野球選手権大会・夏の甲子園中継のエンディングテーマを担当された方だ。
そして、「瞬間(とき)」は90年~94年と2011年、計6回使用された。“強敵” と書いて、“とも” と読むみたいなノリだが、これが今聴いてもいいのだ。
この曲を聴いていたころは、年上のお兄ちゃんたちが眩しくかっこよくみえた。夏といえば高校野球。年を重ねて今や高校生の倍以上の年齢になったが、それでも変わらず毎年筋書きのないドラマに胸打たれる。
私自身が高校生になった95年からは甲子園でかき氷の売り子をしながら高校野球を見る日々が10年近く続いた。奇跡のバックホームを生で見られたのは本当に幸せだった。高校野球を見ながらお金を稼げる。趣味と実益を兼ねるとはこのことだろうか。
さて、「瞬間(とき)」と、西浦さんの話に戻そう。西浦さんの声は聴いただけで夏、そして高校野球を思い起こさせる魔力がある。世間一般でいえば、夏といえばTUBEかもしれないが、私にとっては断然 “西浦達雄” である。
色づき始めた木立が今
秋風に誘われてゆく
「瞬間(とき)」の歌詞の冒頭である―― 思えばこの歌が作られた頃、高校野球も決勝になると、何となく秋風を感じたような記憶がある。おぼろげではあるが。
今 めぐり来る 想いでの中に
ほとばしる汗と涙と
数えきれぬ程の
かけがえのない 大切な日々
目の前をすり抜ける様に
足早に時代が 通り過ぎようとしても
今 この瞬間この日を
いつ迄も 大切に 忘れずにいたい
夏の高校野球は基本的に3年生にとって最後の大会。
勝ち抜けば国体があったりはするけど、苦楽を共にしてきたメンバーと一緒に野球ができる最後の機会と言えるだろう。言ってしまえば単なる部活動なのだけれど、どっしりと日本の夏に根付いている。
次のステージで野球を続ける人もいれば、高校限りで野球をやめる人もいる。ベンチに入れるのはごくわずか。スタンドで応援する球児にもそれぞれの夏がある。
このサビの歌詞は、そういういろんなものをひっくるめた高校野球の魅力が詰まっている。今でもハイライトなどで使われているし、忘れられない一曲だ。
2018.02.08
YouTube / たろうやまだ
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