デヴィッド・ボウイの急逝のショックから立ち直れず、訃報記事を検索すると、ミュージシャンとしての功績はもちろんだが必ず “『戦場のメリークリスマス』に出演” という一文が目に留まる。ボウイと映画の関わりは深かったし、実際これは自分世代には通りがイイ。
個人的にもボウイとの出会いは映画だった。1982年に日本公開されたドイツ映画『クリスチーネ・F』で赤いジャンパーを着てステージで歌う姿のカッコいいこと! この時、自分の中ではムービー・スターとしての認識が固まった。翌年の『戦場のメリークリスマス』以後の俳優としての活躍ぶりはご存じの通り。『ラビリンス/魔王の迷宮』は駄作と呼ばれることも多く、自分も初めて見た時は “バカ映画か?” と思ったが、ボウイ本人が歌う主題歌「アンダーグラウンド」は素直にイイ曲だと思えた。
そう、80年代にボウイが映画のために提供した主題歌は名曲が多い。『キャット・ピープル』『コードネームはファルコン』『ビギナーズ』『風が吹くとき』…… どの映画もボウイの曲がかかるだけで引き締まった。また、『汚れた血』では既発表の「モダン・ラヴ」が使用されていたが、あの場面を思い出すだけで主人公のように路上全力疾走の衝動に駆られるのは筆者だけではないと思う。
最後に、ボウイが遺した映画における最大の功績について語っておこう。それは『月に囚われた男』『ミッション8ミニッツ』とSFの傑作を放ち続ける映画監督にして愛息ダンカン・ジョーンズ。数年前に取材した際、“7、8歳の頃に父と『時計じかけのオレンジ』を見た” と、彼は語った。
今ならR-15指定を受けそうな超暴力映画を幼い息子に見せるのはどうかと思ったが、ダンカンはこう続ける。“見終えて、父はひとつひとつの場面の意味について説明し、「だから怖がることはないんだよ」と言ってくれた” ――アーティスト間、親子間の優れた感性の継承。その理想を見た気がした。
2016.01.17
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