僕が高校生の時『glee』というテレビドラマを観ることが、友人の間で流行した。今でも中高生の支持を集めているそのストーリーは、ハイスクール生活に溶け込めない、はみ出し者が中心。そのDNAは『ビバリーヒルズ高校白書』譲りのものであろう。それをさらに辿れば、「高校生」の「等身大」の悩みを扱うという手法の原点にして最良の映画である、85年公開の『ブレックファスト・クラブ』に出会うことになる。 土曜日の朝、補講に呼ばれた5人の問題児。それぞれが強烈な個性を持っていて、思春期の悩みがすべて集まったかのようだ。物語はデヴィッド・ボウイの素晴らしい箴言から始まる。もうその時点で、初めてこの映画を観た17歳の僕の心はガッツリと掴まれてしまった。『フットルース』や『フラッシュダンス』など、ロックと映画の素敵な出会いが生まれた80年代の映画の中でも、この映画は際立って優れている。何しろロックの初期衝動である「思春期の鬱憤」それ自体が映画のテーマなのだから! 登場人物のうちの一人、「バスケット・ケース」(どうしようもないビョーキなヤツという意味のスラング)の女の子がプリンスのレコードを取り出したり、「例の」マッドネス・ダンスが出てきたり、小道具にも凝っている。ロック好きとして知られる監督のジョン・ヒューズらしいお遊びだ。 しかし、なんといってもこの映画はシンプル・マインズの『Don't You (Forget About Me)』なしには語れない(逆もまた然り)。ラストシーンに「君の悩みを教えてよ・僕はそれを受け入れるよ・だから僕を忘れないで」と歌うこの曲がかかるのだから、完璧である。しかし、その「出来過ぎ」具合に、素直にこの映画が好きだと言えなかったのが若さというもの。この映画が好きだという思いは、自分の隠していた弱さを認めてしまうようでイヤだったのだ。 今になって素直に「好き」と言えるようになった僕はそんな「青さ」を忘れ『心が死んだ』のだろうか。そんな思いを、今でもあの目頭と心を熱くさせる「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」というシャウトが、バッサリ否定してくれる。
2016.05.13
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