アイルランド移民のクリスマスソング、ザ・ポーグス「ニューヨークの夢」
クリスマスソングで一番好きな曲は何? これは悩む問題です。年末になると「♪ ジングルベール」といった巷でよく聞かれる曲には毎年食傷気味になるものの、クリスマスソングという定義でいえばけっこういい曲がたくさんあるからです。
ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」やダニー・ハサウェイの「ディス・クリスマス」なんかはまさに名曲ですし、あのバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」もやっぱりいい曲。そんな私のお気に入りの中で1曲だけ選ぶのは難しいのですが、やっぱりこれかな。
ザ・ポーグス フィーチャリング カースティ・マッコール「ニューヨークの夢(Fairytale Of New York)」
アイルランド出身のケルティック・パンクバンド、ザ・ポーグスによる88年の出世作『堕ちた天使(If I Should Fall From Grace With God)』に収録、アルバムに先駆けてシングルカットされました。プロデュースはストーンズ、U2、XTC、ピーター・ガブリエルなどを手掛けた大プロデューサー、スティーヴ・リリーホワイト。酒場(勿論アイリッシュ・パブ)で大勢で聴くと絶対盛り上がるノリノリの楽曲にまじりながらもひときわ輝く名バラードの「ニューヨークの夢」は、英国では “現代の定番クリスマスソング” として確固たる地位を築いてます。
というと何やらたいそうですが、歌詞の内容はニューヨークに渡ったアイルランド移民のカップルの過去現在の盛衰をクリスマスの夜を背景に描くというもの。ザ・ポーグスの武器ともいえるフィドル(ヴァイオリン)がまたいい味を醸し出します。
素晴らしいデュエットを披露するカースティ・マッコール
ヴォーカルのシェイン・マガウアンとともにヴォーカルを担当し、素晴らしいデュエットを披露するのがスティーヴ・リリーホワイトの当時の奥方カースティ・マッコールです。彼女はシンガーとしてデビューするも思ったようなヒットには恵まれませんでしたが、デビューシングル「ゼイ・ドント・ノウ」を数年後トレイシー・ウルマンがカヴァー(邦題:夢見るトレイシー)、大ヒットを飛ばします。その後トレイシーに他の楽曲を提供するなど作家としての活動をしていたカースティも再びソロ作をリリース。爆発的なヒットには至りませんでしたが、評論家などからは大きな評価を得ました。
私もカースティが大好きで復帰後のソロ2作目『カイト』(ジョニー・マーやデイヴ・ギルモアが参加、ザ・キンクス、ザ・スミスのカヴァーもやってます)などは今でも愛聴盤です。英国のトラディショナル・フォークのスタイルを思い起こさせる美声と独特のヴォーカルスタイルは本当にかっこいいですが、残念ながら2000年にボート事故で亡くなってしまいます。
シェイン・マガウアンの名演技にも注目「ニューヨークの夢」のミュージックビデオ
シェインの方はというとアルコール依存でグループを出たり入ったり。まだ何とかやってます。まあ、この酔いどれヴォーカルが魅力のバンドなので末永く頑張ってほしいです。
ミュージックビデオも歌詞の内容に沿ったストーリービデオになっている、モノクロの名作なので必見!俳優マット・ディロンがシェインをしょっ引く警官役で冒頭に出演しています。ほとんど地でやってるでしょと言いたくなるシェインの名(迷?)演にも注目です。
※2016年12月10日に掲載された記事をアップデート
2019.11.23