1983年の夏休み、秋田県内からほとんど出たことがない高校2年の自分は、初めて東京の土… じゃなくてアスファルトを踏んだ。
上野駅の外に出て最初に思ったのは、「何、この暑さ!?」ということ。
秋田も夏は暑いけれど空気の質が全然違い、目に見えないモワッとした何かに包まれ、息苦しくさえある。ここでの真夏の生活はシンドいだろうなあと、少々恐怖感を覚えた。
とはいえ、輸入盤屋に行けば暑さなんてコロッと忘れるのはレコードオタクのサガ。音楽専科やミュージックライフ誌に載っていた輸入盤店の広告をチェックして場所を突き止め、秋田では決して手に入らないレコを買おうと、今日は御茶ノ水、明日は渋谷と探索した。
今はもうなくなった茶水駅前のディスクユニオンは狭かったけれど、12インチシングルの価格が他店よりも安くて高校生の財布には有難かった。
で、渋谷のCISCOで買ったのが、お目当てのザ・スタイル・カウンシル、12インチシングル『A Paris』。
時のヒット曲「ロング・ホット・サマー」を核にした一枚で、B面に入っていたミック・タルボット大活躍のインストチューンもかっこよかった。
が、やはり「ロング・ホット・サマー」だ。ジャム時代を通じて、それまでポール・ウェラーがこんなユッタリした曲をシングルで発表したことはなかったし、しかも7分を超す曲。当時の自分はビートの効いた曲が好みだったが、それでも大好きになったのは、東京特有のホットなサマーを体感したからかもしれない。
間奏の “しゅびどぅび、しゅびどぅわ” というコーラスやウェラーのファルセットの合いの手は涼しげ。一方で、サビにはふとアツくなる。
その後、東京に住み、30回のモワッとした夏を乗り超えてきた。「ロング・ホット・サマー」の7分間の心地よい揺らぎを体感すると、31回目の夏もフツーに乗り切れそうな気がしてくる。
2016.07.21
YouTube / theaceface
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