レコオタの困った習性は旅先でこそ発揮される。どこか遠くに行くとなれば、周囲にレコ屋がないかを調べる。10~20年前は国内なら学陽書房刊『レコードマップ』を頼り、今ならネット検索。国外のレコ屋も割と簡単に調べが付く。便利な時代になったものだ。
出張時には仕事をさっさと終わらせて、レコ屋へゴー。今は中古盤屋も激減してしまったが、1990年代から2000年代の地方都市のレコ屋は穴場の匂いがプンプンしていて、ワクワクしながら足を運んだものだ。
旅行にしても、観光地めぐりよりは、レコ掘りの方に熱を注いでしまう。20代で初めての海外旅行でロンドンに行ったときは、毎日のようにレコ屋を回り歩いたあげく、ビッグベンもバッキンガム宮殿も見物しないまま帰国した。
そんな困った習性がいつ始まったのか振り返ってみると、高校の修学旅行に行きつく。1983年10月、秋田県立某高校に通うレコオタ予備軍の17歳は京都へ行くことに、ちょっとばかり高揚していた。
秋田の田舎町には存在しないに等しい輸入盤屋が、都会と言うべき京都にはきっとあるだろう…。洋楽熱が異様に高まっていた時期だけに、野望は膨れ上がった。
狙い目は自由行動の時間帯。見知らぬ街ということもあり、「班単位で行動せよ、単独行動は禁止!」と言われてはいたが、他の連中と口裏を合わせ集合場所だけ決めて、あとは独りで自由の身に。
しかし、どこにレコ屋があるのかわからない。ネットもレコードマップもない時代。まあ賑わう通りを行けばあるだろう… と楽観的に考えていたのだから、無知ゆえの怖い物知らずだ。
―― で、お土産探しついでに新京極をブラついていたら、レコ屋に遭遇してしまった。引きが強かったというか、運命というか…。
国内盤と輸入盤が併せて置かれていたそのお店。店内は明るいというよりは、照明が少々暗かったが、それでもこちらの気持ちはアガっている。購入したのは、当時UKチャートのナンバーワンを独走していたカルチャー・クラブ「カーマは気まぐれ」と、リマールが抜けた後のカジャグーグー最初のシングル「ビッグ・アップル」。
ともにUK盤12インチシングル。後に国内盤も出たので、結果的に急いで買う必要はなかったのだが、アガってるうえに12インチの存在感に押されてゲットしてしまった。
そんなレコ屋中心の生活を送り続けて30数年。そういえば新婚旅行のときも、観光をしたあとに我慢できなくなり、むりやり嫁を連れて中古レコ屋に寄ったんだよなあ… などと思い出したのは、最近、嫁が「いいかげん、レコードを処分しなさい!」と怒り始めたから。
レコオタの業は深い。
2017.09.28
YouTube / CultureClubVEVO
YouTube / Martin Minimalwave
Information