チェッカーズは、2018年にデビュー35周年を迎えています。チェッカーズと言えば、お揃いのチェック柄のファッションに身を包んだ初期のイメージが、どうしても強くなりますが、1983年のデビューから、92年の紅白歌合戦での解散まで、チャート的には浮き沈みのない、とても息の長いバンドでした。
その背景には、初期チェッカーズの爆発的人気を支えた、売れっ子ソングライターチーム=売野雅勇・芹澤廣明コンビの手を離れ、86年の「NANA」から始まった、メンバー自作シングル群の音楽的クオリティが、安定的に高かったことがあると思います。
その中でも、個人的に、とりわけサビのメロディが、頭にしっかりとこびり付いている曲を挙げてみると――
「WANDERER」
(87年7年8日)
「Jim&Janeの伝説」
(88年6月29日)
「Room」
(89年3月21日)
「Cherie」
(89年7月5日)
「Friends and Dream」
(89年12月6日)
「夜明けのブレス」
(90年6月21日)
「ミセス マーメイド」
(91年9月4日)
これらの曲には、実はある共通項があります。それは、作曲が鶴久政治だということ。
チェッカーズの中後期シングルは、他にも大土井裕二(ベース)、藤井尚之(サックス)、武内享(ギター)が作曲を担当しているのですが、その中でも鶴久政治の手による楽曲は、サビが異様にキャッチーという特徴があります。
今回は、それらの中でも、私が大好きな「Jim&Jane の伝説」と「Room」と「Cherie」のサビについて、音楽的解析をしてみたいと思います。
まず「Room」。それは、青い波形で示した、上がって下がっての音列の繰り返しがポイント。これを3回も繰り返すことによって、麻酔的効果が生まれ、長期記憶に残っています。

次に、「Jim&Jane の伝説」。これは記事「
80年代という時代の響き、9th(ナインス)の魔術師 玉置浩二」でも注目した音=「9th」の音の活用に尽きます。赤でくくった、ひっかかりのある音がその「9th」です。

最後に、私がチェッカーズの楽曲の中で最も好きな曲=「Cherie」。このサビはもう大傑作で、赤で跳ね上がる跳躍と、その跳躍を含んだ青の波形の繰り返しに対して、ベースが「ド→シ→シ♭→ラ」と、緑の線のように、半音ずつ下降していく(=クリシェ)という対比の、造形的な美しさはどうでしょう。

全体的に、技術的に高度というわけではありません。ただ、とても原始的な音楽的快感が含まれていると思うのです。そのことを裏打ちするのが、当時の鶴久政治氏のこの発言です。
「音楽が仕事になると音には敏感になるけど、それって普通の人の音楽に対する純粋さと違うんですよね。なんで、ギター一本でもしっかりしたメロディをいつも心掛けていますね。新しい方面はフミヤ氏やトオルクンに任せて」(雑誌『PATi PATi』91年7月号)
※2018年3月3日に掲載された記事をアップデート
2019.03.31