1月1日
1980元日発売!時代の転換点となった「TOKIO」すべてを飲み込む沢田研二
63
1
 
 この日何の日? 
沢田研二ののシングル「TOKIO」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます

 
 1980年のコラム 
深夜に咲いた時代のあだ花、カメリアと武富士ダンサーズ(前篇)

共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.1

TOTOの兄貴分、エアプレイ唯一のアルバムはロマンティック?

エキサイティング80's!時代の扉は沢田研二の「TOKIO」によって開かれた

80年代に sus4イントロが増えた理由、その源流はロンドンパンクだった!

ラ・マルセイエズ、国歌をカヴァーしたセルジュ・ゲンズブールの挑発

もっとみる≫


あけましておめでとうございます。

さて、歌謡曲には、しばしば「元日リリース」の曲があります。有名なところでは、1984年元日リリースの中森明菜「北ウイング」があります。また、私が偏愛する新田恵利「冬のオペラグラス」は1986年元日の発売。

しかし、80年代歌謡曲における、「元日リリース」の代表と言えば、沢田研二「TOKIO」をおいて他にはありません。何といっても、80年代が幕開けた、1980年1月1日に発売されたのですから(「80年代」を「1981年~1990年」でカウントする考え方もあるようですが、ひとまず措きます)。

1979年の大みそかから元日にかけて、民放全チャンネルで放映されたテレビ番組=『ゆく年くる年』で、1980年1月1日のちょうど0時0分、沢田研二は「TOKIO」を歌い出したのです。つまり、日本の80年代は「TOKIO」によって迎え入れられたということになります。

この曲の新しさを、3点でまとめるならば、


(1)パラシュートを背負うという、沢田研二の奇想天外なコスチューム。

(2)自身の独創的なベースを中心とした、後藤次利の大胆なアレンジ。

(3)糸井重里による、荒唐無稽でナンセンスな歌詞。


で、今回注目したいのは(3)です。昨年12月13日にNHK BSプレミアムで放映された『いきものがかり水野良樹の阿久悠をめぐる対話』という番組の、水野良樹と糸井重里の対談の中で、糸井による見事な阿久悠評があったのです。

いわく「時代のニュアンスが入るようになって、啓蒙的になり、阿久悠の歌詞はつまらなくなった」(この対談の内容は『ほぼ日刊イトイ新聞』に掲載されています。下記インフォメーションリンクへ)

そこで糸井重里が例に出したのは、1979年発売の沢田研二「OH! ギャル」です。正直、この曲は確かにヒドい。私の自著『1979年の歌謡曲』(彩流社)でも酷評したものです。そして、そのヒドさは、「これからは女性の時代」という啓蒙的メッセージを、歌謡曲の中に抱えてしまったことにあると、糸井は語っていました。

ということは、70年代から80年代への転換は、阿久悠的「時代を啓蒙してみせるぜ」的作詞から、糸井重里的「荒唐無稽でナンセンス=時代なんて決して語んないよ」的作詞への転換だったと言えるのです。

その転換は、沢田研二というステージの上で行われた。眉間にしわを寄せた阿久悠が下手から退き、ヘラヘラと半笑いの糸井重里が上手からやってくる。そして、それらすべてをまるごと飲み込める沢田研二の、表現者としての豊かな包容力。

実は、その1980年元日をはさむ約半年間、阿久悠は作詞活動を「休筆」しています。

東京人ならではの、ソフィスティケートされた言葉を並べる松本隆と、語感のみを重視して、意味から大胆に解放された言葉を投げつける桑田佳祐の2人が、背中からひたひたと迫ってくる中、「時代なんて決して語んないよ」と、阿久悠の根源価値を揺り動かすかたちで、糸井重里が目の前に立ちはだかった―― 阿久悠は、どんな面持ちで「休筆」期間を過ごしていたのでしょう。

しかし、この話には、私がとても大好きな後日譚があります。松本隆、桑田佳祐、糸井重里が80年代前半を制圧した後、彼らの勢いがふっと止まり、更なる新しい才能であり、更なるナンセンス志向の秋元康が完全ブレイクした1986年。阿久悠は、このような素晴らしい言葉を紡ぎ出すのです。


 目立たぬように はしゃがぬように
 似合わぬことは無理をせず
 人の心を見つめつづける
 時代おくれの男になりたい


1986年発売、河島英五「時代おくれ」。この歌詞は、いささか禅問答のようですが、このように説明できます――「時代を語って、時代から疎んじられた阿久悠が、それを逆手に取って、時代の流れを自ら疎んじながら、しかし、そういう男がいてもいい時代だろうと、時代に対してメッセージする歌詞」。

このように、阿久悠をはじめ、様々な人々の人生を巻き込み、大きく変えてしまった沢田研二「TOKIO」は、間違いなく、時代の転換点となった1曲だと思います。

38年前の元日に思いをはせながら―― 今年もよろしくお願いいたします。


平成30年 元旦



歌詞引用:
時代おくれ / 河島英五

2018.01.01
63
  YouTube / 野口靖彦


  YouTube / kahkun1959before
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1966年生まれ
スージー鈴木
コラムリスト≫
27
1
9
8
0
エキサイティング80's!時代の扉は沢田研二の「TOKIO」によって開かれた
カタリベ / 太田 秀樹
82
1
9
8
2
秋元康の長期政権は「Aメロからサビに渡された10文字」から始まった
カタリベ / スージー鈴木
61
1
9
7
9
熱望!沢田研二展、日本のボウイは間違いなくジュリーなんである!
カタリベ / 親王塚 リカ
61
1
9
8
2
松田聖子の歌詞をもっと楽しむ196通りの方法 ー 松本隆 篇
カタリベ / スージー鈴木
38
1
9
8
2
歌が大好きだった父、阿久悠の書いた「居酒屋」と甘いキャンディーの記憶
カタリベ / 蘭 華
66
1
9
8
6
1986年の秋元康「夜明けのMEW」にみる ほとばしる才気
カタリベ / スージー鈴木
Re:minder - リマインダー