6月21日

博多ビートパレード:その神髄はとんこつ臭漂う濃厚な「カリスマ性」にあり

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photo:SonyMusic  
photo:NIPPON COLUMBIA  

いきなりの宣伝で恐縮だが、2019年4月13日(土)博多ビートパレード開催である。

私もそこで DJ タイムを頂いたこともあり、その選曲に際して博多発の音楽なるものを今一度考えてみる。


芸能王国と言われる福岡――。

新旧問わず、ジャンルも問わず福岡県出身の有名人は多い。視点を広げるとよく分からない事になりそうなので、歌謡&ロックの分野に限ってみていくと、なんとなく博多発の音楽、というか福岡出身演者の特徴が見えてくる。70年代初頭から始まる福岡出身の主な「ボーカリスト」を列挙してみよう。

山本リンダ
小柳ルミ子
郷ひろみ
井上陽水
財津和夫
柴山俊之
清水健太郎
武田鉄矢
甲斐よしひろ
チャゲ
飛鳥

… 濃い。

80年代になるとこうなる。

松田聖子
陣内孝則
大江慎也
石橋凌
森山達也
シーナ
藤井郁弥
中村あゆみ
徳永英明
酒井法子

… さらに、濃い。
書いているだけでゲップが出そうだ。

ある者は完璧に虚像を演じ切り、ある者は「ツヤつけとったらいかんばい(カッコつけてちゃいけないよ)」と素をさらし、ある者は悪いモノに手を出し奈落に落ちていく。

その、とんこつ臭漂うキャラクターの濃さ。そしてカリスマ性。

それこそが、福岡出身の演者の特徴であり、博多発の音楽もおのずとそのカリスマ性に根ざした個性的なものになっていく。こうした流れは90年代以降も、KAN、広瀬香美、草野マサムネ、浜崎あゆみ、MISIA、椎名林檎などへと繋がって行く。

今だ受け継がれているボーカリストとしてのアクの強いキャラクターとカリスマ性。そんな観点で、こってり濃厚とんこつスープな選曲を考えてみる。

僕が音楽をむさぼるように聞き始めた1980年前後。博多発のロックが「めんたいロック」と言われるきっかけとなるバンドが相次いでメジャーデビューする。

「ザ・ルースターズ」
「ザ・モッズ」
「ザ・ロッカーズ」

ボーカルはそれぞれ大江慎也、森山達也、陣内孝則。まさに、ド濃厚なとんこつカリスマ性を備えた3人である。

音楽文化の発展にはその土台となる練習・演奏の場と、プロモーションを担うラジオ局のバックアップが欠かせない。あまり知られていないが、博多は基地の街だ。大陸に近いため都市近郊には帝国陸空軍の基地が複数あって、敗戦後は占領軍が接収。軍人相手のナイトクラブやサパークラブが活気づき、キャンプで演奏するミュージシャンも多く育ち FEN もあって… そういう経緯で博多の街は音楽の街になっていったのだ。70年代は「照和」「ぱわあはうす」というライブハウスの他、中洲のナイトクラブ発のミュージシャンがメジャーシーンに殴り込みをかけていた。

そして、80年代になると親不孝通り(大手予備校が2校あり、浪人生が飲んだくれているのでそういう名前が付いた)の近辺が若者の街と化し、「80’s ファクトリー」を始めとするライブハウスが乱立し、新たな時代の若者音楽文化の基盤となっていく。

当時中高生だった僕はライブハウスのような怖い所には到底行けず、佐野元春、浜田省吾、尾崎豊などの「コンサート」でお茶を濁していた。

「大学生になったらライブハウスの熱狂を…」と夢見ていたが、いざ大学生になったら世はバブル絶頂期に入り「ライブハウスで熱狂する」より「ディスコでナンパ」の時代になる。生粋のミーハーである僕は「今更ライブハウスやらダサいやろ。ディスコでナンパせな」と方針転換し、週2で親不孝通りのマリアクラブ(当時西日本最大級のハコだった)に通うキャンパスライフを送ってしまったので、当時のロックには疎く、ユーロビートには詳しい(笑)。


話を大江、森山、陣内に戻そう。僕が一番好きだったのはザ・ルースターズの大江慎也である。


♪ 俺はただおまえとやりたいだけー!


―― と、「恋をしようよ」で叫ぶ様はまさに「ツヤつけとったらいかんばい」というぶっちゃけ本音ロックの最高峰だし、彼らの創り出すロックとポップの入り混じった絶妙なビート感は中高生のハートも直撃した。

しかし、「ぶっちゃける」という行為は自らも傷を負う。大江は82年頃から精神異常を来し、音楽活動は崩壊し始める。まさにカリスマの生き方である。

陣内孝則は周知の通り、そのルックスと軽快な語り口を活かしてトレンディ俳優の仲間入り、今でも一線級の俳優である。若い人は「え? 陣内孝則ってロックバンドやってたの?」と思うだろうし、やっていたとしてもお遊び程度のものと考えるだろうが、僕ら世代から言わせると「陣内はお笑い系俳優ではなく、ロッカーズのカリスマボーカリスト」以外の何者でもない。石橋凌もそうだが、そのマルチタレント性は福岡発ボーカリストのカリスマポイントでもある。

そして森山達也…

武骨である。
同じ福岡出身の高倉健並みである。

テレビ番組への出演時に「あなた方はこれまでどんな活動を?」を聞かれ、苦笑いしながら「音楽活動です」と答えた森山のカッコよさを今でも忘れられない。現在に至るまでプロデューサーとしてシンガーとして求道者のような音楽活動を続けている真のカリスマである。

そして今日、2019年3月30日は森山達也63歳の誕生日。還暦を過ぎてなおロックの求道者たる姿は、鮎川誠先輩に続く世代として「博多の誇り」である。

4月13日(土)博多ビートパレード@スポットライト新宿。なんとなく選曲のイメージはできてきた。

GW(ゴールデンウィーク)の博多の街は例年人出ナンバーワンとなる『博多どんたく港まつり』が開催される。
それより一足先に新宿の夜を博多濃厚とんこつ臭で満たすべく、皆様にもぜひ足を運んで頂きたく。

2019.03.30
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カタリベ
1968年生まれ
安東暢昭
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