6月25日

EPICソニー名曲列伝:傑作「SOMEDAY」を生み出した佐野元春の編集感覚

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photo:SonyMusic  

EPICソニー名曲列伝 vol.4

佐野元春『SOMEDAY』
作詞:佐野元春
作曲:佐野元春
編曲:佐野元春
発売:81年6月25日


「EPICソニー名曲列伝」は、わずか連載4回目にして、EPICソニー史上、一二を争う傑作を紹介することとなる。

ただし注目すべきは、翌82年にリリースされた同名アルバムの勢いを受けて、佐野元春を大きくブレイクさせることとなるこの曲が、その1年前に、シングルとして、ヒットすることもなく、ひっそりと発売されていたということだ。

発売日は1981年6月25日。大滝詠一の大ヒットアルバム『A LONG VACATION』の発売は、そこからさらにさかのぼること約3か月の3月21日。今回のコラムの主人公は、この「約3か月」、具体的には「97日間」。さらに言葉を補えば ―― 「たった97日間」だ。

この曲の制作は、80年の秋、佐野元春がタクシーの中で押し黙っている姿から始まる。

―― 大滝さんが『A LONG VACATION』のレコーディングをやっている頃、スタジオへ遊びに行っていいか訊いたら「おいでよ」って言ってくださって。佐野君も誘ったら是非行きたいっていうんで、一緒に六本木のソニー・スタジオへ行きました。(中略)それでスタジオへ行くと、例のフィル・スペクター方式ですよ。驚きましたね。アコースティック・ギターが何人もいて、ピアノも2人ぐらいいて、何回もピアノをかぶせてね。(中略)その光景を見て、佐野君もびっくりしてました。帰る方向が一緒なんで、佐野君と同じタクシーに乗って帰ってきたんですけど、佐野君も衝撃を受けたようで、凄く口数が少なかった(伊藤銀次『自伝 MY LIFE, POP LIFE』シンコーミュージック・エンタテイメント)

私が驚くのは、佐野元春の飲み込みの早さだ。70年代の大滝詠一が、苦闘に苦闘を重ねて、やっとこさ作り上げたナイアガラ・サウンドの技法を、あっという間に習得し、『A LONG VACATION』のたった97日後に、「佐野元春版ナイアガラ・サウンド」とも言える、この『SOMEDAY』をリリースしたという事実だ。

マキタスポーツ氏は、私と出演しているBS12 トゥエルビの『ザ・カセットテープ・ミュージック』の番組内で、「佐野元春は編集者(エディター)だ」という意味の発言を数回している。私も同感で、特に初期・佐野元春は、まるで編集者が雑誌の特集を毎回変えるがごとくに、音楽的方向性がころころと変容している。

架空雑誌『初期の佐野元春』バックナンバー
・『アンジェリーナ』:特集「ブルース・スプリングスティーンとニューウェーブ」
・『ガラスのジェネレーション』:特集「ニック・ロウとパブロック」
・『SOMEDAY』:特集「大滝詠一と私」

特集はころころと変容しているものの、雑誌自体のコンセプトは「洋楽ロックンロールと日本語の過激な融合」というあたりで一貫しているからこそ、徐々に人気を拡大できたと考えるのだが。

その『SOMEDAY』の号の特集は「大滝詠一と私」。つまりこの曲は、大滝詠一からの影響を、佐野元春自身がどう受け止めたかということがテーマの作品になっている。

――「銀次、“SOMEDAY” は僕の好きなようにやってみたい」

と、伊藤銀次は佐野元春から言われたという(前掲書)。作詞作曲はもちろん、編曲も佐野自身による。

ちなみにこの曲、ブルース・スプリングスティーン『ハングリー・ハート』との類似性がよく指摘される。確かに歌い方(激似)や深い音像を活かした録音には類似性が見られるが、当の曲そのものについては、恐ろしく単純な循環コードの『ハングリー・ハート』に対して、『SOMEDAY』のコード進行が、かなり複雑な、作家性が高い作りであり、要するに全く別物であることを、あらためて指摘しておきたい。

さて、冒頭に書いたように、この曲が一般的に知られるのは、翌年5月に発売されたアルバム『SOMEDAY』のリリースによってだ。82年といえば私は高1。土曜日の放課後、高校の音楽室から流れてくる、誰かがグランドピアノで弾くこの曲のイントロを聴いて思った――「何と美しいメロディなのだろう」。

当時はまだ佐野元春や音楽理論に関する知識を持ち合わせてなかった。だからこそ、とても感覚的にイントロの美しさを受け止めたのだと思う。今思い出すそのときの感覚と、この曲に組み込まれた2つの劇的なフレーズは、見事に呼応する。


♪ 若すぎて何だか解らなかったことが リアルに感じてしまうこの頃さ
♪ ステキなことはステキだと 無邪気に笑える心がスキさ


最後に、この曲のシングルリリースと同時に配布されたチラシに掲載されていた、佐野元春本人によるメッセージのエンディングを紹介しておく。


―― そして一言。世の中の右傾化を語るよりも、まず初めに “約束” ということを教えることが必要だよ。 一九八一年五月 佐野元春

2019.04.19
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