8月1日

早見優「PASSION」アイドルポップスとロックのバランスが絶妙!

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元祖バイリンギャル早見優、「夏色のナンシー」でブレイク


今から35年前の8月1日、早見優の14作目のシングル「PASSION」が発売になりました。早見優は、1982年4月21日にシングル「急いで!初恋」でデビューしたのですが、少女期にグアムそしてハワイで育ったことから、英語が話せるアイドル、元祖・バイリンギャルと強く打ち出されました。

そんな彼女がブレイクしたのは、ご存じ1983年4月の通算5作目のシングル「夏色のナンシー」。本人が出演するコカ・コーラのCMソングで、健康的な日焼けした肌と筒美京平らしい洗練されたメロディーの相性も抜群、おまけに意図的に入れられた英語での長文歌詞の発音も大きなアピールポイントとなり、初のオリコンTOP10入り(最高7位)、累計26.9万枚のヒットとなりました。

キュートなポップス路線から、クールなロック路線へ


その後、9作目のシングル「誘惑光線・クラッ!」まで5作連続で『ザ・ベストテン』での出演、シングル売上も累計15万枚以上をキープするも、次の「Me☆セーラーマン」(ミスター・セーラーマンと読みます)がややコミカルに映ったのか低迷、さらにブレイク後初となるしっとり系のバラード「哀愁情句」も2作続けて『ザ・ベストテン』に入らず、シングル売上も10万枚を割りはじめます。

そうして、次の一手を模索していた1985年、早見は同じ芸能人でのバイリンガルの先輩として可愛がってもらっていたアン・ルイスの勧めもあり、キュートなポップス路線から、クールなロック路線へと歩み出します。アン・ルイスが1983年にアルバムで歌っていた「女・Tonite」をカバーした「Tonight」、ドラマ『サーティーン・ボーイ』主題歌に起用されリック・スプリングフィールドの楽曲を日本語でカバーした「STAND UP」は、共にのどを絞るような激しいシャウトを多用して果敢に挑みましたが、オリコンTOP10入りはしたもののセールス面での巻き返しには至りませんでした。

中原めいこが手掛けたアッパーチューン「PASSION」


そんな土俵際で迎えたのが、今回紹介する14作目の「PASSION」です。本作は、本人主演の映画『キッズ』の主題歌(共演:佐藤浩市)というお膳立てもある中で、作詞・作曲を前年に化粧品CMソング「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね。」でブレイクを果たした中原めいこが担当したアッパーチューンで、これがポップスとロックのバランスが絶妙で良いのです。

まず、ギターがループする中でホーン・セクションが応戦するという新川博によるアレンジが冴えたイントロ。次に、相手への恋心がどんどん高まっている焦燥感を表したようなAメロ、「♪ Fly Away~」から街へ駆け出すようにより躍動的になるBメロと進み、息つく間もなく(本人もこの部分はブレスする箇所がなく、ステージで苦労したと各種ライナーノーツ等で語っています)、まさにほとばしる “PASSION” をぶつけるサビと、速いテンポでのハード・ポップス路線となっています。実は、この部分サラリと歌っていますが、彼女が歌が上手いからこそ自然に聴こえるのだと思います。

また、サビ2回繰り返しの大サビ前に「♪ 今すぐ抱きしめに来て~」から始まるスローなCメロが入るのも、楽曲に緩急があって聞き飽きないよう工夫されています。中原めいこは、シンガーソングライターでありながら、ヒット曲のエッセンスを上手く抽出したような作り方で、その点は筒美京平をお手本にしてきたのではないでしょうか。だからこそ、筒美京平ポップスでヒットを重ねてきた早見優とも相性が良かったのでしょう。

アイドルポップス保守派もロック革新派も双方納得!


本作で特筆すべきは、テンポが速いことや恋心を告げていることもあって、前作までのノドを絞るようなロックな歌い方が行き過ぎず、なめらかに流れるようなポップス系の歌い方を随所に取り入れている点。それゆえに、従来のポップス路線のファンも新たについたロック路線のファンも双方納得の本作が出来上がったのではないかと思います。

その結果、前年の「誘惑光線・クラッ!」以来5作ぶりの10万枚突破となり、1985年度の年間ランキングの邦楽部門では、レコードが97位、またラジオリクエストも71位とこちらも4作ぶりにTOP100入り(いずれもオリコン調べ)。さらに、有線放送リクエストでは年間70位と、これは83年の「夏色のナンシー」の84位や後年ディスコから火が付いた1987年の「ハートは戻らない」の97位よりも上位で、実は早見にとって最大の有線ヒットとなっています。

80年代前半のポップス路線や、後半のユーロビート路線を賞賛されることの多い早見ですが、ロック的なアプローチの中で、幅広いファンから愛される「PASSION」という曲があることも、どうぞお忘れなく。個人的には、このシングルのB面収録で中原めいこが作詞・作曲を手がけたサンバ調の「XANADU(ザナドゥ)」も超おススメ!メイン・ボーカルとコーラスが掛け合う点もやはり筒美京平ポップスファンならグッときそうな隠れ名曲です。


Song Data
■ PASSION / 早見 優
■ 作詞・作曲:中原めいこ
■ 編曲:新川博
■ リリース日:19858月1日
■ オリコン最高位:10位
■ 推定売上枚数:11.7万枚
■ 100位内登場週数:13週


2020.08.17
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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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