ロンドンで楽しみにしていた音楽のお祭りが二つあった。その一つが夏の終わりに行われるクラシック界の祭典、プロムズ。 その中でも “the last night of the Proms” と呼ばれるプロムズの最終日はちょっと特別だ。特に後半は、英国国歌の「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」はもちろんなのだが、第二のイギリス国歌と呼ばれる「ルール・ブリタニア」「ジェルサレム」「威風堂々」など、もろ愛国心丸出しのセットリストが定番だ。 驚くのは「ルール・ブリタニア」のサビと「威風堂々」の中につけられた歌詞「ランド・オブ・ホープ&グローリー」は思い思いの格好をした観客の老若男女たちが立ち上がって「ぴょこぴょこ」しながら大熱唱するのだ(そもそも舞台の一番近くは立ち見席になる)。 もちろん、この二曲は必ずアンコールがお決まりだ。記憶違いでなければ、「ランド・オブ・ホープ&グローリー」は3〜4回アンコールがあった年もあったような。「またかよっ!」と観客からはやんややんや、喜びの反応。という記憶がある。 英国民ではない私は蚊帳の外的な視点からしか見れないが、何年、何度、見ていてもクラシックの優雅さと(この日ばかりは茶目っ気もたっぷりだが)このプロマーたちの盛り上がりのミスマッチに圧倒され、感動するのだ。 愛国心なしにはこの騒ぎはないのかもしれないが、クラシック音楽のお祭りでこんなものが他にあるだろうか。 音楽ってこういうものじゃん! という楽しさがあって、すごくワクワクする。下品と楽しさがいい案配で同居する。それが国民レベルだからすごい。もちろんアンチもいるのだろうが。 クラシック好きじゃなくてもこのお祭りで熱唱するのが大好きな人はきっと多いはず。一服盛られちゃったようなイギリス人がテレビ画面に溢れる。ちょっとやり過ぎなくらいがいい。 イギリスよ、永遠に。どこまでも、どこまでも我々は進み、自分たちは絶対に奴隷にはならない。とね。 でも、さあ、今年のプロムズ最終日はどうなるだろうか。EUから離脱した今、彼らはこれらの歌をどんな気持ちで熱唱するのだろう。そして、イギリスに限らず、私たちはどこへ向かうのだろう。誰も見たことのない地への航海がもうすでに始まっていることに気づいている人はどれだけいるのだろうか。何を持って「希望と栄光」と言えるのか、私たちはまだ知らない。 エンベッドはテンポが良いのになんとも優雅な雰囲気が素敵な1984年の『ランド・オブ・ホープ&グローリー」を。手前で指揮している男性たち数人にも注目(笑)
2016.07.09
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YouTube / littlelugs2001
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