1986年7月24日は、ボクシングファンには忘れられない日になりました。浜田剛史選手(現:帝拳ジム代表)が、WBC世界ジュニアウェルター級のチャンピオンになったのです。ご存じの方も多いかもしれませんが、浜田選手はサウスポーのハードパンチャーで、圧倒的な強さでKOの山を築いていて、日本中からの期待を集めていた選手です。
ところが、彼を悲劇が襲います。あまりの強打に自身の左拳が耐えきれず骨折してしまうのです。それも1回じゃありません。4回も繰り返してしているのです。「いよいよ世界戦か」といわれる度のアクシデントですから、彼の苦悩は、一般人の私には、想像すらできません。それでもあきらめることなく、復帰後には連勝街道をばく進(なんと15連続KOも)。遂に世界戦を迎えたのです。
試合前に視聴者に届けられたのは、彼のリハビリ中のドキュメント映像。試合ができる日を夢見て、右の拳だけでサンドバックを打ち続ける姿は、観るものの涙を誘いました。「次に骨折したら年齢的にもアウト」という状況でしたが、浜田選手は「今日は心置きなく左を打てる」とコメントしたと伝わっています。
1Rのゴングが鳴ると、後のことを全く考えていないようなラッシュ。とにかく前へ前へと出る姿は、リハビリ中の苦しい思いをすべて表しているような勢いでした。そして残り10秒、チャンピオンをロープ際に追い詰めKO。練習してきた右フックで大ダメージを与え、フィニッシュは左ストレートでした。場内が大歓声に包まれる中、長い苦悩から解放されたのか、彼の放心したような表情は、忘れることができません。思わず、「防衛戦なんかいらない。もうこれで充分だ」と感じてしまいました。
そして、このとき流されたのが柳ジョージさんの『フォー・ユア・ラブ』。浜田選手の男っぽい顔と、柳さんのヒゲ顔と切ないバラードが重なって、いたく感動したことを覚えています。もともと柳さんのファンでもあった私にとって、とても大切な1曲になりました。皆さんの中にも、この試合をご覧になった方がいるのではないですか?
2016.01.23
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