7月23日

1986オメガトライブ「Navigator」カルロス・トシキのナイーヴなヴォーカル満載!

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カルロス・トシキのライブで杉山清貴が飛び入りデュエット


2019年9月24日にモーション・ブルー・ヨコハマで行われた『カルロス・トシキ&B-EDGE TURNE FINAL DE VERAO 2019』のライブに、杉山清貴さんが飛び入りして、カルロス・トシキさんと「What’s Going On」をデュエットで披露した。

1995年に音楽活動を休止しブラジルに帰国した後、2017年から年に一度来日してのライブを再開していたカルロス・トシキさんだが、それまでにもカルロスさんのライブには杉山清貴さんが訪れていたそうで、「来てくださってるなら何か歌ってくれれば」とカルロスさんが冗談で言ったところ「いいよ!」と杉山さんは快諾、電話でトントンと話が決まり、リハーサルもなしでぶっつけ本番だった… と、2019年10月の『ミュージック・モア』(TOKYO MX)で語っている。

日本の歌謡曲で育ったカルロス・トシキ


カルロスさんにとって杉山さんは兄貴でありお手本だったという。1982年に日本で音楽活動をするために来日するまで、ブラジルで流れていた日本の歌は『紅白歌合戦』や『ザ・ベストテン』止まりで、カルロスさんが知っていたのも西城秀樹さんや沢田研二さんといった歌謡曲。カルロスさん自身がブラジルでのオーディションで歌った曲も西城秀樹さんの「ブルースカイブルー」。現地では “ブラジルの西城秀樹” と称された。

ブラジルで流れる日本の歌謡曲で育ったカルロスさんは、ニューミュージックと言われた音楽もユーミンも山下達郎も吉田拓郎も知らなかった。杉山さん時代のオメガトライブも「SUMMER SUSPICION」くらいしか知らなかったカルロスさんのデモテープがオメガトライブのプロデューサー・藤田浩一さんの手に渡り、オーディションで杉山清貴さんの歌を歌い、2代目オメガトライブのヴォーカリストになった。

リスナーの裾野を広げた和風AOR、杉山清貴&オメガトライブ


70~80年代の日本では、お茶の間に流れる音楽がどんどん洋楽の影響を受けてアップデートされた。同時にリスナーである消費者も馴染んでいった。そんな中で1983年に和風AORとしてリスナーの裾野を広げた一翼が杉山清貴&オメガトライブ。

歌謡曲的な哀愁を残したメロディ×洋楽的なサウンドで、都会とリゾートで展開される男と女のスタイリッシュな恋模様を歌い、その世界観は若者の身近な憧れとなった。1985年12月24日で杉山清貴&オメガトライブは解散する。

サウンドも世界観も少し違う1986オメガトライブ「君は1000%」


年が明けた1986年5月。同じ “海” をコンセプトとし、“オメガトライブ” を名乗るもののサウンドも世界観も少し違う1986オメガトライブがシングル「君は1000%」で世に出た。

ヴォーカルに日系3世ブラジル人のカルロス・トシキさん、サウンドは和泉常寛さんや新川博さんを中心とした打ち込みが目立つ。杉山清貴さんと一緒に演奏していたメンバーからはギターの高島信二さん、キーボードの西原俊次さんの2人が継続して参加し、アルバム『Navigator』9曲中5曲は彼らが作曲している。

プロデューサー・藤田浩一さんは、菊池桃子さんで成功させたゴージャスサウンド×ナイーブでイノセントなヴォーカルでの “せつない恋物語” を男性目線からやりたかったのかなと思う。

詞は売野雅勇さん、有川正沙子さんに加えて、アルバムのタイトル曲「Navigator」では藤田さんとカルロスさんが書いている。杉山清貴さんの声がカラッとしているのに比べてカルロスさんは少し湿気を帯びてくぐもった声質なのも、内気な男の子らしい。

オメガトライブといえば…?


わたしが彼らの作品を最初に聴いたのは、2年弱の海外留学から帰国した1987年のこと。日本にいなかったので、「君は1000%」がドラマの主題歌だったことも、ヒットしていたことも後から知った。

オメガトライブといえば杉山清貴。そこに馴染んでいたわたしには理解するのにも、受け入れるのにも少し時間がかかったことは確かだ。聴き出したのは1988年7月開始のドラマ『抱きしめたい!』のオープニングテーマ「アクアマリンのままでいて」からになる。もっともその頃にはもう彼らは、“カルロス・トシキ&オメガトライブ” になっていた。

そんなわけで、発売から2年後の1988年になって初めて聴いた1986オメガトライブのアルバム『Navigator』。分厚く隙のない “てんこ盛り” の打ち込みデジタルサウンドに、少年のようなカルロス・トシキのナイーヴなヴォーカル。どこを切っても男の子の恋する気持ち “君が欲しい” がいっぱい溢れている。

切ないボーカルに垣間見える焦燥感、だがそこがいい!


杉山清貴さんの歌がシチュエーションとしては年上男性×同年代または年下女子の甘美なドライブデートだったのに対して、カルロスさんの歌は年上の女性との恋。甘々で生々しいのに妙にファンタジックなのは打ち込みサウンドのマジックだろう。

場所が車のフロントシートであれ海辺のヴィラであれ、年下の男の子が年上の女性にまっすぐ恋をして一生懸命アプローチしながらも、相手の女性に甘えているのがダダ漏れている。

悩まし気な男の子を演じるカルロスさんの、じりじりとした焦燥感が垣間見えるヴォーカルが切なくてたまらない。だがそこがいい! 大きな魅力であることは間違いない。男の子ってそうやって大人になっていくものと個人的には思っている。

少年と年上の女性との9つの恋物語「Navigator」


そんな、少年と年上の女性との9つの恋物語は、ジャケットに描かれている海と熱帯魚のようにキラキラ輝いた瞬間をぎゅっと閉じ込めている。色に例えると、透明感のあるアクアマリンが相応しい。

ちなみに、ウイキペディアで「アクアマリン」を検索すると、こんなエピソードが出てくる―― 古いヨーロッパの船乗り達は、美しい海を思わせる色合いの宝石アクアマリンを海の力の宿ったお守りとして大切に持っていた。ブラジルのサンタマリア鉱山で採掘される深いマリンブルーの石が最高品質とされている。

“海の力の宿ったお守りの向こうに、船乗りたちは愛する女性を想っていた” と想像するのは、いささかロマンチックすぎるか。


※2021年2月23日に掲載された記事をアップデート

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2022.04.07
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カタリベ
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