中森明菜がボブのウィグ(だと後で知った)をつけて、斬新にアレンジされた着物姿で歌った「DESIRE」。1986年2月3日に発表されたシングル曲。最初、テレビで見たとき、この歌をうたう彼女にしばらくみとれてた。
みとれてたっていうか、これまでとなんかちょっと違う気がした。ヘアスタイルとか、片袖だけの着物風の衣装とかで、大人の女性のフェロモンがけっこうビートの効いた歌のすきまから漏れてくるような気がしたからか? ナメてかかれないオトナの色気があって、そして、かっこよかった。
話はちょっとそれますが、ぼくが社会人になってすぐあとに、中森明菜が「スローモーション」でデビュー。まあ世界がまるで違うのでこんな言い方もどうかと思いますが、どでかい枠で考えれば、勝手に「同期入社」みたいに思う部分もあるわけです。彼女も初々しくてかわいかった。「ただかわいいだけじゃない」ってオーラは出ていても、新入社員みたいな雰囲気あって。
でも、たとえば社会に出て会社勤めをして、3年とか4年とか過ぎて自分の仕事もそれなりに評価されはじめてくると、自分の環境がちょっと窮屈になってくる感じというか、仕事に対する我欲が出てくるみたいなことありませんか?
「DESIRE」のとき、彼女はハタチ。アイドル畑から生まれてきた歌手ではあっても、その枠が窮屈で、半身踏み出して自己表現を始めたような感じもしたんです。スターとしてのあでやかさもパワーも備えて「もうアイドルとかいいや、ハタチだし」みたいな気持ちにもなっていたんじゃないだろうか。いや、まったくの推測にすぎませんが。
ぼくはこのとき26。彼女とは別世界で、実績もまるで比べようがないけども、自分がやっている仕事の枠を飛び越えたくてもがいてました。テレビで「DESIRE」をうたう彼女を見ながら、同期入社のかわいい感じの女の子が、いつのまにかめちゃいいオンナになって、なんかでっかい仕事し始めたなー、みたいな驚きもあったんですよね。
「やり切れない程 退屈な時があるわ あなたと居ても」
でまあ、このフレーズは刺さりました。相手が認めざるをえないいいオンナだから、特に。ぼくはあまりアイドルとか歌謡曲とか興味ないんですが、そんな思いもあって、中森明菜さんは別格なんですよね。
余談ですが、この当時、受験のまっただなかだったという知人も「DESIRE」をよく聴いていたようで、彼女は「♪ まっさかさまに堕ちて」という歌詞におののいていたのだとか。うーん、たしかに。
その歌を、どんな環境で聴いていたのかによって、刺さり方も違うんだなあ、なんて思う。いずれにしても、やっぱ偉大なヒット曲ってのは人生に何らかのスパイスをふりかけていくもんですね。
Song Data
■DESIRE / 中森明菜
■作詞:阿木燿子
■作曲:鈴木キサブロー
■編曲:椎名和夫
■発売:1986年2月3日
※2016年6月25日に掲載された記事をアップデート
2018.07.13
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