7月7日

スターボー「ハートブレイク太陽族」女性アイドルグループが売れなかった80年代

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80年代に登場した女性アイドルグループ、スターボー


1980年代は日本女性アイドルの大全盛期であったことは、誰もが認めるところだろう。1990年代アイドル冬の時代を経て、モーニング娘。やAKB48らが大ブレイクした1999年から2010年代はグループアイドル群雄割拠の時代だったが、その時代をしのぐ勢いというか、老若男女日本国民全員が大なり小なり誰かを推しているような、1980年代はそんな時代だった。

隆盛を極めた1980年代の女性アイドルシーン、その最大の特徴は次から次へと出現したピン(ソロ)女性シンガーによってその隆盛が形成されていたということだ。80年代の10年間を俯瞰してみれば、一般的に知られたグループアイドルといえば、おニャン子クラブとWinkの2グループのみ。あとは強いていえば、プロモーションに莫大な金額が投下されたと言われた少女隊とセイントフォーあたりか。

80年代女性アイドルといえば、見事に切磋琢磨するピン女性シンガーたちによって形成されていたのだ。まあ女性アイドルシーンという意味では、1960~1970年代からピン女性シンガーが主流であったわけで、それが踏襲されながら1980年代において一気に新たな女性アイドルシーンが増幅したということになるのだが。

さてそれでは1980年代には女性アイドルグループは世に出現していなかったのか…?

―― もちろん答えは、ノーだ。驚くべきことに毎年複数(2グループ以上)の女性アイドルグループがデビューし、そのほぼすべてが失意の下、人知れずシーンから消えている。そんな中、1980年代のグループ・アイドルを語る際(なかなか語る機会はないのだが)、人々の口の端にのぼりがちなのがスターボーだ。かの伝説のスターボー。口の端にのぼりがちなのはスターボーに違いない、はずだ。

デビュー曲は松本隆×細野晴臣「ハートブレイク太陽族」鉄壁の布陣… だったが


実は今年2022年は、スターボーの初シングル「ハートブレイク太陽族」(1982年7月発売)がリリースされてちょうど40年―― そうデビュー40周年という節目の年なのだ。

それにしてもスターボーは、実際まったく売れず、まさしく人知れず消えていったグループだった。「ハートブレイク太陽族」は、作詞:松本隆、作曲:細野晴臣という鉄板の布陣で臨んでいたし、デビュー時のコンセプト設定(宇宙から来た性別不明の3人、立ち居振る舞いや無表情というギミック!)も徹底していたし、なによりも売り出しに1億円かけたという送り手側の鼻息の荒さは、少ないながらも一定数の人には届いていたのではないかな。

―― しかし売れなかった。既に筆者は80年代に入ってから、日本女性アイドルのシングルレコードをほぼのべつまくなしに購入するという時期ではあったのだが、スターボーは買わなかったんだよなあ。テレビを筆頭にほとんどのメディアで目にしなかったし(ホントに1億円投入したのか?)、どことなく漂う “イロモノ感” が、購入を躊躇させていたのだと思う。

21世紀に入ってから再評価。「あまちゃん」のコンセプトCDにも収録
スターボー「ハートブレイク太陽族」がなぜ売れなかったのか、それはすでに巷間指摘されてはいるが… 楽曲のキャッチーさ不足(松本×細野陣営は、あえて振り切っていたのだろうが)、時代の雰囲気として受け入れ難いコンセプト、そもそもグループアイドルが基本的に擁すべき醍醐味みたいなものが削がれている。そして松田聖子、柏原芳恵、河合奈保子といった80年デビュー組ビッグネームに加え、82年5月までに松本伊代、堀ちえみ、早見優、石川秀美、小泉今日子、中森明菜といった主要82年組もデビューという状況でのリリースは分が悪い… こう考えると、よくオリコン・シングル・ランキングにチャートインしたな(98位)、とまで思えてしまう。

1990年代後半の昭和歌謡ブームから派生した2000年前後の “テクノ歌謡” 再発見気運の中、「ハートブレイク太陽族」は21世紀に入ってからいくつかのコンピレーションCDで再発されだした。極めつけは朝ドラ『あまちゃん』のコンセプトCDに収録されたりして(2013年)、この曲は21世紀になってそれなりに知られる作品になった。

間違いなく1980年代当初よりも、00年代以降の方が再評価・再認知が著しいのが「ハートブレイク太陽族」だ。テクノ歌謡の金字塔ジューシー・フルーツ「ジェニーはご機嫌ななめ」とまではいかずとも、コスミック・インベンションや真鍋ちえみと肩を並べた感は、あるかな。こういう意味では、スターボーって、80年代に人知れず消えていった女性アイドル・グループの中では、かなり幸せな方なのでは。

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2022.07.07
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カタリベ
1962年生まれ
KARL南澤
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