宇崎竜堂、矢沢永吉をはじめ、葛城ユキ、髙橋真梨子、アン・ルイス、鈴木聖美 with ラッツ&スター、椎名恵、五輪真弓、亜蘭知子、小比類巻かほる、KATSUMI、中西圭三、久保田利伸、そしてB'z、氷室京介などなど… ある会社のCMで使われた歌手の名前の「ごく一部」である。 どこだと思いますか? そう、あの時代に青春を過ごした者なら、まだ覚えているだろう。カメリアダイヤモンドである。まさに夜のヒットスタジオならぬ夜のヒットCMとでもいうべき存在でありながら、今や歴史の表舞台からその記録が消されようとしている。 しかし、日本のポピュラー音楽の歴史を振りかえるとき、80年代初めから90年代初めまで、10年ひと時代に亘り同社のCM群がヒット曲を生む大きな役割を果たしたことは疑いようが無い。 80年代は、コンビニとファミレスが普及し、24時間営業化が進んだ。それにつられるかのように、テレビの深夜放送化も進んだ。日本中がどんどん夜更かしになって行くのが日々実感された。 宵っぱり達がTVリモコンをプチっとやると、必ず画面に現れたのが、カメリアダイヤモンド(ジュエリーマキ、じゅわいよ・くちゅーるマキ、ブティックJOYほか様々な店舗ブランド)のCMだった。コルゲンコーワ(興和)と並んで深夜に雨あられの如く放送される圧倒的なCM量。私が大学生のときに一番テレビから浴びせられたCMは、間違いなくコーワとカメリアである。 豪華だったのは歌手ばかりではない。まず度肝を抜かれたのがCM画面に登場する絢爛豪華な女優たち。スーザーン・アントン、ファラ・フォーセット、ダイアン・レイン、シャロン・ストーン、桃井かおり、ジュディ・オング、秋吉久美子、池上季実子、はては米倉涼子まで。ナレーションも一流で、『刑事コジャック』でおなじみ名声優・森山周一郎だったり、『演歌の花道』で有名な来宮良子だったり。 広告主の (株)三貴は1965年創業の宝石輸入・加工・販売を中心とした会社で、一時期は宝石商として国内最大手だった。ブティック部門も業界上位のシェアを誇っていた。豊富な資金をバックにテレビCMを打ちまくっていたのだが、不思議なことに、CM中に肝心の「ダイヤモンドの商品カット」が1秒たりとも入らなかった(後年、若干の例外はあったが、80-90年代は皆無)。イメージを売る戦略だったのだろう。これが実質的にPVの役割を果たしていた。 三貴の重要な顧客はオミズのお姉さんたち。彼女らが店から自宅に帰って、あるいはシャチョーさんとのお泊り先で、深夜に目にするスポットCMは効果ドンピシャであった。確たる証明データがあるわけではないが、オミズ→カラオケ→ヒット の因果関係は、どなたにも容易に想像できるだろう。 高橋真梨子『桃色吐息』や鈴木聖美 with ラッツ&スター『ロンリーチャップリン』なんかのヒットは間違いなくカメリアCMのお陰と云える。B'z『太陽の小町』や氷室京介『ヴァージン・ビート』ですらも、CMの影響力の大きさは否定できないだろう(後に、この手法を真似て深夜CM大量投下で急成長するのがavexである)。 だが、97年にメインバンクの北海道拓殖銀行が潰れ、さらに労使問題なども影響し三貴は経営破綻。民事再生法の適用を受ける(現在は再建)。もう今は派手なテレビCMはやっていない。世間は薄情である。あれだけ世話になったのに、深夜に咲いた真っ赤な椿の花=カメリアを、みんなもう忘れてしまったかのようだなぁ。
2017.03.22
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