1987年の原宿、僕はドクターマーチンのショップにいた。目的はロックンロールシューズ、8ホールを購入するためだ。
仮にロックンロールシューズの1足目をコンバースとするなら、2足目がラバーソウルで、3足目がドクターマーチン。
その前年、原宿に今もあるアストアロボット(A Store Robot)でとうとう念願のイギリス製ロボットのラバーソウルを手に入れたが、その時は心細く、近所の先輩に連れて行ってもらったので、今度は思い切って一人で来た。
KIDS の街というのは世界中を探してみても原宿ぐらいしかなく、そこが自分の王国(KIDSDOM)の様な気がして、有頂天だった。その日は、オーソドックスなドクターマーチン黒の8ホールブーツを購入して帰宅、箱を開けた時の皮の匂いや紐の質感まで今でもすんなり思い出せる。
実はドクターマーチンに魅せられたのは、スキンズや2トーン、Jパンクの影響ではなく、84年にデビューしたイギリスはコヴェントリーのバンド、キングの影響だ。
『さあ、ブーツをはいてでかけよう』
こんなキャッチフレーズと共にドクターマーチンのイラストが描かれたレコードジャケットの帯。ライナーの写真ではバンドのリーダー、ポール・キングが7分丈のスーツを着用しスプレーを施したドクターマーチンを合わせていた。彼のブーツへの塗装は独創的でドクターマーチンの公式本にも紹介されている。
この着こなしは、デヴィッド・ボウイのサウンド+ヴィジョンツアー(Sound+Vision Tour / 90年)公式パンフレットにあるヴィジュアル「ダブルのジャケットに七分丈のパンツプラスブーツ」というスタイルに驚く程類似していた。ポール・キングのセンスには脱帽する。
キングのシングル「ラヴ&プライド」は全英2位にチャートイン。『トップ・オブ・ザ・ポップス(Top of the Pops)』にも出演し、鳴り物入りで日本盤も発売された。ヴォーカルのポール・キングの濃さに圧倒されてあまり注目されなかったが、ギターのジム・“ジャック”・ランツベリー(Jim “Jackal” Lantsbery)は顔の長さや体型がバービーボーイズの “いまみちともたか” にそっくりだし、キーボードのミック・ロバーツはイアン・デューリーとデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのケビン・ローランドをブロンスキ・ビートのジミー・ソマーヴィルで割った様な個性的な風貌であったのに日本では全く売れなかった。
どんな一発屋のバンドよりも全く記憶に残らず完全に忘れ去られてしまってはいるが、彼らこそ最後のニューロマンティックバンドだったと思う。レコードを入手出来たなら、来たる2018年11月17日の DJイベント
『Golden 80’s vol.2 – みんなの洋楽ナイト』でかけてみたい。
さて、意気揚々と原宿で購入した例の「ドクターマーチン・黒の8ホール」は無残にもラッカースプレーするのに失敗して見る影も無くなってしまった。結局、あまり履く機会もなく、キングみたいにイカす履き方するつもりだったのにすっかりトラウマとなった――
そんな事があり、この年齢になるまでマーチンは履いていなかったが、この秋、本当に久し振りにドクターマーチン×ヨウジヤマモトの10ホールを履きたいと思っている。
2018.10.15