中学で英語に触れて初めて映画音楽とロックを聴き始めたので、ロックといえば英語。「英語圏」なんて言葉も知らなかったから、英語といえばアメリカかイギリス。 80年代にも例外というか「英語=アメリカ・イギリス」に当てはまらない曲はたくさんあったのに(コリー・ハートやブライアン・アダムスとか)、無知と偏見から「ロック=英語・英米」と無邪気に楽しんでいたものです。 ノルウェーの A-ha「テイク・オン・ミー」(1985年)はいわずもがな。その他にも、イタリアのガゼボ「アイ・ライク・ショパン」(1983年)、小林麻美のカバー「雨音はショパンの調べ」(日本語詞:松任谷由実)で知っている方もたくさんいるでしょう。 オランダのタコ「踊るリッツの夜(Puttin’ On The Ritz)」(1982年) ―― PVで正装決めこみ杖を操る姿が、曲同様に妖しい雰囲気を醸し出していました。 ドイツのネーナ「ロックバルーンは99(99 Luftballons)」(1983年) ―― ドイツ語ヴァージョンもよく耳にしました。 オーストリアのファルコ「ロック・ミー・アマデウス」(1985年) ―― 映画『アマデウス』(1984年)のヒットを追い風に英語とドイツ語を織りまぜたノリノリな曲でした。ラップなんて言葉も普及していなかったし、 日本語版 Wikipedia で「色物扱いされる類いの曲であった」とある通り、PV を含め確かにキワもの感満載なアーチストでした。 さらに先日ふと想いだしたのがアルファヴィル。「ビッグ・イン・ジャパン」と「フォレヴァ―・ヤング(Forever Young)」(1984年)がよく流れていました。 グループ名はゴダールのカルト映画の題名でしたね。愛の失われた近未来都市が舞台の、ゴダール唯一の SF 物。今でこそ公開前から早速傑作扱いされる神監督ですが、『勝手にしやがれ』『女と男のいる舗道』『小さな兵隊』『アルファヴィル』『男性・女性』『気狂いピエロ』など、あの時期のゴダールはストーリーを放棄していないというか、観客の胸をえぐるような傑作の数々をこれでもかというほど生産していました。 それでバンドのアルファヴィル―― 当時の僕の情報源と言えばせいぜいラジオの『全米トップ40』か、その後の『全英トップ20』ですから、その辺で聴いたのでしょう。英語で歌っているし、チャートに登場するから気にも留めていなかったんですが、ドイツのバンドで、当時はスウェーデンや欧州で特にヒットしていたそうです。 「フォレヴァ―・ヤング」は、べったりまったり甘美なメロディラインのシンセポップですし、デビューシングルでグループ最大のヒットといわれる「ビッグ・イン・ジャパン」もどこかで聴いたような、今想えばややありふれた感じがしないでもない。折しも、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンが大流行りの時期で、英米のチャートに登場しテレビで PV が流れ、英語で歌っていて、シンセポップでメロディアス。 今は大学までランク付けされる時代。ランクとチャートが知名度を上げ消費者を集めてお金儲けをする仕組みなんでしょうが、「英米 / 英語 / ランク」という枠組みを離れて、時代を感じさせてくれる音というのもあるものですね。
2019.01.18
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