9月24日

80年代ポールの最高傑作「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」の不遇

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ポール・マッカートニーのシングル「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」がリリースされた日
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photo:45cat  

1980年代に入ってからの「遅れて来たビートルズファン」である僕にとって、リアルタイムで聴いた元メンバーの新曲はどれも宝物だが、中でも最高の名曲といえば、ポール・マッカートニーの「ひとりぼっちのロンリー・ナイト(No More Lonely Nights)」に尽きるだろう。

この曲を収録したアルバム『ヤア! ブロード・ストリート(Give My Regards to Broad Street)』は、ポール自身が脚本・主演・音楽を担当した同名映画のサウンドトラックでもある。レコードに針をおろし、ポールが歌い始めた瞬間、僕はなんとも言えない幸福感に包まれた。あの最初のワンフレーズ。そしてポールのヴォーカルでもう決まりだった。

新しい名曲に出会った。そう確信した。「これはすごい曲だ! 絶対ナンバーワンになる!」と、そばにいた母親に言ったのを覚えている。

ところが、この曲がナンバーワンになることはなかった。イギリスでは2位を記録したが、アメリカにおいてはチャートの6位で足踏みすると、そこからするすると下降していき、さしたる抵抗もしないまま姿を消したのだ。

僕にはそれが不思議でならなかった。というのも、チャート上位のどの曲よりも「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」の方が優れた曲なのは明らかだったからだ(少なくとも僕にはそう思えた)。

ユニークなイントロ。情感のこもった歌い出し。サビのフレーズ。必殺のメロディー。美しいアレンジ。エンディングのギター。どこを切っても名曲としか言いようがなかった。

この曲を聴いてなぜじっとしていられるのか? なにかレコード店へ駆け込めない事情でもあるのか?どんなに首をひねってもその答えは見つからなかった。そんな気持ちを心の片隅にもちながら、僕は「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」を繰り返し聴きつづけた。

これに輪をかけて不幸だったのはむしろ映画の方だった。どの雑誌でもこてんぱんに酷評された。ここまで悪く言われると、かえってすっきりするほどだった。でも、僕はこの評価も不思議でならなかった。というのも、映画はとても面白かったのだ。

僕は前売り券を購入し、封切りとほぼ同時に映画館へ足を運んだ。ポールが画面に大きく映るたびに心が踊った。しかも、リンゴ・スターまでがバンドメイト役で出演しているのだ。文句などあるはずもなかった。

ストーリーのテンポもよかったし、いいシーンもたくさんあった。とりわけ「イエスタデイ」~「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」~「ワンダーラスト」のメドレーには震えるほど感動した。

観終わった後、パンフレットと一緒にこの映画を特集した本も購入した。とても充実した内容だったので繰り返し読んだ。僕は「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」を口ずさみながらページをめくり、映画のシーンを頭に思い浮かべてはほくそ笑んだ。そんな夜をいくつも過ごした。

全米チャート10週連続第1位、年間チャート第1位、グラミー賞ソング・オブ・ジ・イヤー獲得…。僕が思い浮かべたことはなにひとつ実現しなかった。

現実とはかくも不可解なものであることを、僕はこのとき思い知った。そしてこの不遇な結果が、後の不幸を生むことになる。

「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」は、ポール・マッカートニーの偉大なキャリアの中でも、指折りの名曲のひとつに数えられる。それなのにこの曲がライヴで演奏されたことは1度もない。

あぁ、なんという不幸だろう。

今年(2017年)4月、ポールは来日公演を行ったが、そこでもやはり聴くことはできなかった。終演後、居酒屋にいるときこの曲が流れてきた。瞬時に耳を奪われ、会話が止まった。

友人が「ライヴで聴きたいよね」と言った。その通りだった。今回は聴けなかったけど、次回は期待している。いつまでも「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」を待ちつづけている。

2017.05.10
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  YouTube / Largarife2


  YouTube / The Beatles TV
 

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カタリベ
1970年生まれ
宮井章裕
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