過日隣に住むおばちゃんが、「今、ガーと来て、キーとなって、バンときて、ダンとなって大変だったのよ。ご主人ご存じ?」と聞いてきた。
私は「いいえ、ご存じないですぅ~」と変な日本語で返答してしまった。おばちゃんの言葉を翻訳すると「車がガーと来て、人が飛び出し、キーとブレーキをかけたけど間に合わず、バンとぶつかって、ダンと地面に倒れ、救急車で運ばれて大変だった」ということである。
おばちゃんというのは自分だけに分かる「擬音語」や「擬声語」を多用する人種であるのは周知の通り。この「擬音」と「擬声」を合わせたものを「オノマトペ」という。他国に比べ日本人はオノマトペを常用・多用する民族であるらしい。
確かに「ジャラジャラ」と言われれば小銭のことだとすぐ分かるし、「ツンツン」と「デレデレ」を併せて「ツンデレ」などという複合技まで編み出してしまうのは日本人ぐらいであろう。以前外国の医師が、痛みの種類で「ズキズキ、チクチク、ガンガン」などの擬態語の豊富さに感動していたのを思い出す。
私の浅い知識量はさておいて、逆に外国語で思いつくオノマトペは、電話の「ディング・リング・リン」と、お化けが「ブー」、犬が「バウ・ワウ」くらいだ。
これは洋楽、邦楽にも当てはまる。邦楽は「ギンギラギンにさりげなく」「ドキドキが止まらない」などオノマトペのオンパレードであるが、洋楽にはほとんどオノマトペは使われない。しかし、絶対に無いのかというとそうではない。例えばニール・セダカの「恋の片道切符(choo choo train~♪)」や「恋の一番列車(ding dong ding dong click clack a chugga chugga~♪)」などには結構使われている。
またある意味、ザ・ポリスの「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」(80年)がそれである。ポリスの日本語訳を見ると「お前に伝えたいことは、“ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ” だ」と訳されている。さらに「この言葉に意味はない」と歌詞は続く。意訳すると「真実は言葉には縛られない」というメッセージのようだ。
まさかとは思うが、隣に住むおばちゃんも「真実は言葉に縛られない」とか思っているのだろうか? 救急車で運ばれていった人が軽傷だったことを祈る。
2017.03.12
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