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4月7日は《鉄腕アトム》20歳の誕生日!我々は手塚治虫の描いた未来に近づけたのか?

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21世紀の我々は手塚治虫の描いた未来にどれだけ近づけたのか


漫画・アニメ『鉄腕アトム』の主人公アトムの誕生日は4月7日。生まれた年は2003年というから2023年の今年、ちょうど成人を迎えたことになる。

しかし、我々が今生きる世界は作者の手塚治虫が描いた「鉄腕アトム」の世界にどれくらい近づけたのだろうか――。

もちろん手塚氏が初めて漫画作品として書き下ろしたのは1951年だから、世に出たのはもう70年以上も前のこと。そこは空想科学の夢物語だから言うまでもなくあくまで設定上の話である。

アトムを作ったのは科学省の長官、天馬博士。自ら製作したロボットを失ったわが子の身代わりに育て上げようとした博士は、やがて “彼” に失望して手放してしまう。

その理由は彼が一向に “成長しない” ことにあった。最先端の電子頭脳(=人工知能)がいくら知的に成長しようと、ボディを拡大しない限り、物理的に成長するはずもない。博士もそんなことは当然承知の上とはいえ、改めて「ロボットは勝手に育たない」という “科学の限界” を突き付けられて呆然とするしかなかったというのが真相ではないだろうか。

アトムの内面の成長度合いは、やがて博士の想像を遥かに超えていくことになるのだが、その時点では知る由もない。

そうして作者が今世紀に託した「鉄腕アトムの具現化」という “前提” は生誕とされる日から20年を経た現在でも今だに実現していない。

人型ロボットの理想形とそれを迎え入れる社会との関わりを軸に展開した「鉄腕アトム」


2023年。物語上でアトムが成人を迎えるにあたり、改めて作品を見返してみると、手塚作品のご多分に漏れず、その内容に示唆を含んだものが少なくない。

例えばアトムという名前も天馬博士が想いを込めて名付けたわけではない。それは人々にインパクトを与え見世物として注目を集めようと目論んだサーカスの団長が、原子力(Atomic)にちなんで名付けたいわば芸名である。

まだ原爆投下の記憶も新しいその当時、作品タイトルとして相応しいかの論議がされたかも知れないが、当時はそれが最先端科学の象徴であったことは想像に難くない。

平和利用への期待の表れとしてこれほど相応しい言葉もなかっただろう。たとえ戦争に利用されようとも科学技術には罪があるわけではない。要は使う人間の目的と考え方の問題という意味合いもあろう。物語では彼をサーカスから取り戻した後任の科学省長官、お茶の水博士もアトムの妹には「ウラン」、弟には「コバルト」と名付けている。

アトムのビジュアルは天馬博士の一人息子「トビオ」君を模した小学4年ぐらいの男の子。物事の善悪を理解してある程度の分別をわきまえることができ、自我に目覚めて時折悩むこともある… といった絶妙の設定。これから社会を学ぶに相応しいお年頃である。

もちろん広く読者・視聴者の支持を得られるよう、あくまで表向きは子供向けの作品の体を成しており、人間のために作られたロボット、アトムの目を通して人間社会を時折斜めに見ながら、彼の冒険と成長を見守ることができるという、見ようによっては大人の目線でも楽しめるエンターテインメントになっていた。



アトムの成長物語に込められた科学への「警鐘」とロボットとの「共存」というテーマ


物語はシリーズを通じ、大別して2つの大きなテーマによって構成されていたように思う。ひとつは科学技術への過度な依存と過信がもたらす危機である。アトムの敵として立ちはだかる登場人物の多くはマッドサイエンティストたち。

自分の欲望のために科学を悪用する者や、復讐心から敵対する組織に危害を加えようとする者、征服欲に駆られた者やそれらに手を貸す技術者たちである。善悪が明らかなこれらのストーリーは勧善懲悪ものとして描かれ、アトムは上司でもあるお茶の水博士に極めて従順に、世界中のどこにいようと、どんな無茶ぶりにも応えてみせる。アトムのハードウェアの威力が存分に発揮される。ここがファンの子供たちが心躍らせる最大の見せ場である。

だが時折、良かれと思って進めてきたことが、思わぬ事故や天変地異で意に反して暴走したり、他者から理解を得られず苦しむような必ずしも断罪できない敵も登場する。

研究所の事故で未完成のまま外へ放り出され、善悪の区別がつかず命じられたままに盗みを手伝うロボットや、飢饉に備え食料となる生物を大型化する研究に努めてきた科学者、余命のない重篤な重症患者を励ましながら看護にあたる嘘つきロボットの開発者等――。

アトムはこれら事件に向き合うたびに悩み、傷つきながら、成長を重ねていく。彼の究極ともいえる人工知能はやがて感情の起伏、意欲やプライド、怖れや審美眼をも獲得するまでになっていく。

果たしてロボットは人間の道具に過ぎないのか。アトムの出した結論


もうひとつのテーマは、人間社会におけるロボットとの共存… つまり異質なものを受容できるかという人間の寛容さが問われていることである。

ロボットという言葉はチェコ語で「労働」を意味する「Robota」に由来するといわれている。語源からしてまるで人間を支援することが前提となっているかのようだ。事実「ロボット」という言葉は「操り人形」とほぼ同義で「人の言いなり」「イエスマン」「傀儡」といった具合に決していい意味では使われない。登場人物の中には敵味方問わず「ロボットは人間の言うことさえ聞いていればいい」と言う者が度々現れる。

アトムをサーカスの見世物という境遇から救い出すきっかけになったのは、お茶の水博士が成立に尽力した「ロボット人権宣言」なのだが、かたや人間たちは「ロボット法」なるものを制定してロボットたちを縛ろうともする。高い能力を持つロボットたちを怖れ、どこまでもロボットを支配下に置こうとする。

人間を補完する存在でありながら感情がなく兵器としての側面を持つ彼らへの恐怖を人々はいつまでも克服することができない。

だがアトムは健気にも「ロボットは人間の幸福のためにいるんだ」と述べて、溶岩のあふれる噴火口や、遂には宇宙船もろとも太陽に突入することも厭わない自己犠牲ぶりを示してみせる。

ファンの間では神回と称される “地上最大のロボット” プルートウとの対決では、敵の人質となったお茶の水博士に代わり、開発者である天馬博士が現れて力を貸すことになるのだが、精神的にも成長したアトムを見た彼は、単なる数字では測れないその能力に感心し、

「ロボットの中で一番素晴らしいロボットはプルートウではない! それはお前じゃアトム」

―― と言い残して去っていく。そして決戦に臨んだアトムはプルートウを追い詰めながらも雌雄を決することなく彼を赦そうとする。本来課せられた使命にこそ存在価値を示すことができるロボットであるアトムがここに至って、自らそれをあきらめるという決断ができるまでになっていたのである。

今こそ人間に問われる未来への覚悟。アトム誕生に向けて残された課題


生まれた場所が違う、肌の色や性別が違う。或いはイデオロギーや価値観が異なるというだけで、不寛容さを露呈することもある我々人間が、人の姿をして言語を操り、時として自分たちよりも優れた能力を発揮する人外の存在を果たして容易に受け容れることができるだろうか。

その畏怖は映画『2001年宇宙の旅』に登場する最新鋭のコンピュータ “HAL2000” や『ターミネーター』の全自動防衛システム “スカイネット” のような暴走する人工知能(AI)等、自らを停止・無効化しようとする人間を敵とみなし、徹底して抵抗を図る性質の悪い“道具”として描かれている通りだ。その期に及んで人々は、常に彼らより優位な立場でコントロール下に置かなければ、安心して眠る事もできなくなるというのが、極めて悲観的な未来像である。

おそらく人間が異質のものを受け入れる “寛容” と共存していく “覚悟” を持ち合わせることがなければ、たとえ各論では技術的に可能になったとしても、それらをすべて統合しこの世にアトムを誕生させることは困難だろう。

例えばそれは、人間のクローンなどと同様に科学だけでは解決できない、むしろ人としての倫理や哲学として始末をつけるべき課題なのかも知れない。

作品としての「鉄腕アトム」は原作漫画からのTVアニメ化という、現在のエンタテインメントの図式にも繋がる先駆的な作品でもある。

60年代から幾度となくシリーズアニメ化され、2003年アニバーサリーのリメイクに至るまで、時代と共に多少表現の形は変わっているが、根底に描かれたテーマは脈々と引き継がれてきた。同年、浦沢直樹氏によるオマージュ作品『PLUTO』の連載も反響を呼び、いよいよ今年待望のアニメ化が控えている。

幸いなことに幼い頃よりあらゆるメディアでこれらの作品に触れ、そこに描かれた人類への警鐘を見出し、少なからず共感を得ることができた我々を “ロボティックス・ネイティブ” と位置付けられるなら、少しは明るい未来を描けるのかも知れない。

そのために我々はこれから誕生する “新しい何か” を迎える心構えをを養うべく備えが必要だ。人間の脳には「忘れる」という機能が備わっており、人工知能には「消去」はできても、これはなかなか真似できない芸当らしい。そこで我々は過度な怖れをしばし“忘れて”彼らに歩み寄ってみるというのはどうだろう。

例えば、「OK Google」でも「Hey Siri」でも、まずは “機械” に語りかけるところから始めてみる。受付のPepper君を積極的に活用しよう。住環境にプログラミングされたスマートハウスに住むのもよいかも知れない。

“彼ら” のような科学技術の結実に大いに慣れ親しんで、隣人として愛することができれば、手塚治虫が21世紀に期待した「アトム誕生の未来」にまた一歩近付くことができるのではないだろうか。

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2023.04.07
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