中1の私は金曜の夜、塾がなかった。しかも明日の土曜は半ドン! そんな浮かれ気分で毎週7時から楽しみに見ていたのがフジテレビ系列の青春ラブコメドラマ「翔んだカップル」だ。
柳沢きみおの漫画や、薬師丸ひろこ主演映画が印象に残っている方も多いだろう。高校生の男女が一軒家で同居し、ボクシング部の先輩までが乗り込んできて騒動が起こるという、そんなストーリー。主人公は桂木文と芦川誠、先輩役には轟二郎(コント100連発)。佐藤B作や松金よね子などが脇を固めた。
ギャグや小ネタ、パロディをこれでもかと押し出し、目から星を飛ばすといったアニメ合成の走りも随所に見られるなど、全体的に80年代の始まりを感じさせるナウな作品だった。桂木が薬師丸ひろ子のCMを模倣し、轟が座頭市や水戸黄門を真似るといった、アホ中学生のハートを鷲掴みにするセンス。また、伝説のサブカル雑誌「ビックリハウス」の編集長、高橋章子が「ども!」などと言って出てきたのもクールすぎ。番組最後のNG集は、当時はそれ自体が斬新で、毎回大爆笑だった。
だが、MVPは当時二十歳の柳沢慎吾である。故 梨元勝レポーターの名前を頂くクラスメイト役、梨元慎吾は毎週熱かった。「太陽にほえろ!」のパロディ「太陽にまねろ!」での山さん役や、当時の大ヒット曲「ダンシングオールナイト」の身体を張った物真似とか、もう好き勝手! OA翌日の学校は梨元君を真似する生徒で溢れかえったね。実は彼、近所に住んでいてよく道で会ったし、体育祭を見にきて大騒ぎになったこともあった。純白の短パン&ヘアバンド姿を未だに覚えている。彼の芸風はこの時点ですでに確立されていた。今と全く変わらない。
最終回、3人が共同生活した家のキッチンで、芦川誠が一人思い出を反芻するシーンは涙なしに見られない。笑えて泣けて、そして切ない青春ドラマにきちんと仕上がっている。そんな切なさを彩るエンディングテーマが、H2Oの2ndシングル「僕等のダイアリー」。来生えつこ・来生たかおの姉弟コンビの手による爽やかな青春ナンバーだ。歌詞に「翔んで翔んで~」と入っているし、ドラマありきで作られた曲なのかもしれないが。
その後「翔んだ~」というタイトルはシリーズ化され、柳沢慎吾主演による「翔んだライバル」「翔んだパープリン」へと続く。「翔んだライバル」の主題歌、ヴァージンVSの「さらば青春のハイウェイ」も、私にとっては思い出の曲だ。重い制服や放課後の騒めき、黒板消しの裏で先生に叩かれたあの頃を思い出す。「翔んだシリーズ」は、とても甘酸っぱい青春グラフィティなのである。
2016.06.23
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