10月21日

伊藤銀次の80s:これがホントのうちわ話「ウインター・ワンダーランド」制作秘話

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伊藤銀次のアルバム「WINTER WONDER LAND」がリリースされた日
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1977年にリリースした『DEADLY DRIVE』が、残念ながら不発に終わり、その後5年間ほどソロ活動の停滞を余儀なくされていた銀次は、80年代に入りポリスター・レコードから再びソロアルバムを出せるとなって、鬱積していたものを一気に爆発させるかのように、1982年、1983年の2年間に、なんと4枚のアルバムをリリース!!

半年に1枚づつ立て続けにリリースされた、『BABY BLUE』、『SUGAR BOY BLUES』、『STARDUST SYMPHONY』は、折からの欧米の ’60sリメイクの風を借りての、勢いある銀次の3部作であった。

そしていよいよ4枚目の制作にあたって、この3枚で僕がずっと心に溜め込んでいた、モータウンやマージービートなどの60年代ポップロックへのオマージュがすでに完結していることに気づいたのでした。

しかもこの3枚のリリース後、全国で僕のポップロックを楽しんでくださるファンが増えてきて、おまけに自分のソロのライヴもできるようになった。

そこで4枚目は僕を応援してくださってるみなさんへの感謝の気持ちを込めたアルバムにしようと思いたったのでした。

タイトルは『WINTER WONDER LAND』。ちょうどリリースのタイミングが秋あたりなので、この冬をこのアルバムとともに暖かいお部屋やクルマの中などでくつろぎながら過ごせるようにというコンセプト。

このアイデアは作詞家の康珍化さんから。「大滝さんが夏のアルバムなら、銀ちゃんは冬休みのアルバムがいいんじゃない? クリスマス・イブ生まれだし」という提案で決まったのでした。

そこで、このアルバムではロックっぽさを少し抑えて、ビートルズたちが現れてきた60年代の初期にあった、いわゆるイージーリスニングやボサノバなどのポピュラー音楽で行こうと決めたのでした。

ただしこれを生のミュージシャンで録音すると、きっと古くさい音楽に聴こえるかもと、前作の『STARDUST SYMPHONY』で一部の曲に加わってくれた、マニピュレーターの松武秀樹さんにほぼ全面参加してもらい、「打ち込み」による往年のポピュラー音楽の「リメイク」に挑戦することに!!

とはいえ、YMO のようなテクノではなく、主にドラムスだけを人間ではなくてマシーンで行きたかった。そこで『WINTER WONDER LAND』では、全10曲中、山木秀夫君が生で叩いてくれた「パーティー・トーク」と「白い恋人たち」以外の8曲を、思い切って松武さんの打ち込むドラムスで!!

始まったときは若干不安だったけど、進むにつれ、これは今までにないおもしろいアルバムになりそうな予感。最後に吉野金次さんのすばらしいミックスで予想以上にユニークなアルバムになりました。

そんな作業の中、ただ1曲だけ「僕と彼女のショート・ストーリー」で、危うく暗礁に乗り上げそうなシーンがあった。

この曲は、子供の頃毎週見ていたTV番組『シャボン玉ホリデー』のエンディングで使われていた、ロス・インディオス・タバハラスの「STARDUST」のようなイメージ。木製のドラム・スティックのスネアの音ではなく、ジャズドラマーがバラードなどでよく使う「ブラシ」の音がほしかった。

これは、先っぽに何本もの針金様なものがついてて、スネアの表面をこすって「ザー」という音を出しながら、2拍目と4拍目を叩き「パサ」という音を出すプレイ。

当然、松武さんのサウンド・ライブラリーにあると思ってたら、なんとさすがの松武さんもブラシの音源は持ってないとのこと。

これがないと始まらないので、なんかブラシの代わりになるものはないかとスタジオのあちこちをみんなで捜索。そのうちアシスタントの青年が、これはどうでしょうと見つけてきたのはなんと、近所の商店街から配られた「うちわ」!! 

これを見た松武さん、「おお! いいかもしれませんね。紙を引っ剥がして骨だけにして試して見ましょう」と、見るも無残な骨だけうちわでスネアを叩いて見たら、おお、まるでブラシの音!! さらに擦ってみると、おお、ザーって音がほとんどブラシ!! これだこれだ!! 危ないところをうちわに救われ一同もう大笑い。

種明かしをすると興ざめかもしれないけれど、あの「僕と彼女のショート・ストーリー」のブラシは「骨だけうちわサウンド」。うちわを音源に使ったのは、世界広しといえども、たぶんこの1曲だけだろうなあ。

2019.05.26
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カタリベ
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