「クリスマス・ソングと言えばどの曲を思い浮かべますか?」と純粋想起で質問されたとする。大抵の人は、やはり山下達郎の「クリスマス・イブ」と答えるのではないだろうか。
もちろん世代によって変わってくるとは思うけど、80年代だと「クリスマス・イブ」の次は松任谷由実の「恋人がサンタクロース」、洋楽だけどワム!の「ラスト・クリスマス」あたりでTOP3がまとまるはずだ。この3曲を否定する気はまったくない。でも音楽好きを自負する僕は、敢えてこのメジャー過ぎる3曲を外して答えることにしている。要は通ぶって、あまり知られていない曲を語ったりしてカッコつけるわけだ。今回のコラムは、そんな僕のとっておきのクリスマスソングの話です。
『CLUB SNOWBOUND』は、1985年11月15日に発売された浜田省吾のミニアルバム。5曲の極上のクリスマスソングで構成されている企画アルバムで、浜田省吾本人曰く、幼少の頃から良く聴いていた60年代のオールディーズポップスを意識してクリスマスアルバムを作りたかったのだけど、自分のアルバムでやるのは気恥ずかしいから、企画モノとして制作したとのこと。
音作りにも非常にこだわっていて、全曲のアレンジを任された板倉雅一によると、フィル・スペクターの作るウォール・オブ・サウンドと同じ手法を用いて、アコースティックギターを何本も重ねて録音したり、シンセサイザーだけでもの凄く多くのトラックを使ったり、コーラスのアレンジにも妥協はしなかったとのことだ。だからこのアルバムはとてもキラキラしていて、これぞクリスマスアルバムという仕上がりになっている。
僕のとっておきのクリスマスソングは、この素敵なアルバムに収録されている「MIDNIGHT FLIGHT -ひとりぼっちのクリスマス・イブ-」。浜田省吾を代表する珠玉のバラードだ。結婚しようの一言が言えないままに、イブに彼女と別れてしまい、その失ったものの大きさに気付き、痛みを感じることさえ出来ない、という浜田省吾お得意の悲恋のストーリー。
「もうひとつの土曜日」が “打ち明ける愛” がテーマだとすると、「MIDNIGHT FLIGHT -ひとりぼっちのクリスマス・イブ-」のテーマは “打ち明けられなかった愛”。いずれの曲も指輪が重要なポイントになっている大人のラブソングだ。この曲はシングルカットされていないので、知らない人も結構いるのではないではないだろうか。このコラムをきっかけに知ってもらえると凄くうれしい。
浜田省吾が、クリスマスイブをひとりでぼっちで過ごす、どこかの誰かさんにために作ろうと思ったという『CLUB SNOWBOUND』は、発売から30年経った今でもまったく色褪せていません。残念ながらアナログ盤は廃盤ですが、1987年に発売されたサマー・ソングのミニアルバム『CLUB SURFBOUND』(こちらもアナログ盤は廃盤)とカップリングされたCD『CLUB SURF & SNOWBOUND』は手に入ります。今年のクリスマスプレゼントに迷われている方、このアルバムをプレゼントしてみませんか。
ただ、浜田省吾の歌詞は強烈ですので、変に誤解されたりしたら大変です。贈る相手は慎重に選びましょう。
2016.12.24
Dailymotion / Erland Orvel
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